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めもめも ...〆(。_。)

認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。

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ひさしぶりに古典再訪シリーズ。
これでたぶん3つめぐらいだろうからそろそろシリーズを名乗ってもおかしくないだろう。
とはいえ不定期だからあてにはならんな。

それはともかく、今回はDual-coding theryですよ。
これはPicture Superiority Effectの(http://azcog.blog.shinobi.jp/Entry/441/)を参照してもらったほうがよい話。
この2つは切り離せないというかコインの裏表というか、まあDual-coding theoryが原因でPicture Superiority Effectが結果、とPaivioらは考えているわけで。
教科書的に言えば片方に言及するときもう片方は勝手に内包されていると仮定されてるのかな。
ただ、Picture Memoryをがっつりやってるひとたちならわかると思うけども、常にPicture Superiorityがあるわけでもないし、encodingはdualってだけでなくあらゆるモダリティで行われていると考えるのがふつうではないかな。
まあヒトは視覚優位なとこがあるし、代表的なモダリティを拾うのであればdualって言っても問題はないかも?いやさすがにちょっとざっくりしすぎか?

とりあえず、

Paivio, A., & Csapo, K. (1973). Picture superiority in free recall: Imagery or dual coding. Cognitive Psychology, 5, 176-206.
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0010028573900327

で紹介されている分をざっくりざっくりまとめると以下のようになる。
ここでは、はっきり「theory」といわずに「dual-coding approach」と言ってるので、この時点ではtheoryとしての確立はしていないけども、この論文の実験はdual-codingをtheoryとするための検証という側面もあるので、この論文をdual-coding theoryの代表と考えてもいいのかな。
とりあえず以下まとめ。

情報処理は、言語みたいなsymbolによる過程と、言語に依存しないimageryによる過程の2種類がある。
この2つは別個に処理されるけども、記憶の諸過程(符号化とか貯蔵とか検索とか)においてちゃんと関連付けされている。
んで、imagery過程は具体的な事象のrepresentationに特化してて、symbol過程は言語などの抽象的な過程に特化している。
画像なんかはimagery過程とsymbol過程両方で処理できて、一方のrepresentationをもう一方のにおきかえることも可能で、手がかり増えるから記憶パフォーマンスがよい。というのがPicture Superiority Effectだったわけですね。

モダリティごとの処理というのはBaddeleyのワーキングメモリモデルなんかにも引き継がれていくわけですが、dual-codingの考え方単体でもそれなり生き延びている様子。
まあ何よりもびっくりなのがPaivioもBaddeleyも現時点で生きてることですよ。
教科書的人物が生きてるのってなんかすごいよねー。たぶん本人らにしてみれば「何抜かす若造め」ってもんなんでしょうけど。

実際dual-codingを扱ったものとしては、以下に出すようにいろいろあるようす。

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21656220
は本人含む研究グループで、ERPつかっての検証。
本人以外でも
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1141833
などでdual-codingの検証はなされているようす。

展開としては、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21585499
はmental imageryにおける空間情報のdual-codingの話。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8794554
はちょっと変わってて、嗅覚に関するdual-codingの話。

ワーキングメモリとの関連も、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17932697
のレビューなどにまとめられている。
研究の例を挙げると、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21942734
はギリシャでこどものワーキングメモリと読解能力の関係を調べる上でdual-codingに基づく解釈を行っている。

しかしなんといっても関連が多く論じられているのはSemantic研究で、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8711012
は本人含むグループでPicture namingについてのレビューでdual-codingもその1要素として語られているし、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15893940
は単語のimageabilityに絡めている。
そんなdual-coding絡みのsemantics研究の中でも、「具体性(concreteness)」の効果
に関するものは特に相性がよいようす。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8064248

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17651011
などが挙げられる。

さらにsemanticsメインじゃなくても、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16861011
のように再認における具体性効果についても絡められておるもよう。

それからcontext availabilityでも援用されているみたい。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16550855
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10924219
など。

古典といえど現役なのだなあ。

そいや、dual-coding approachがdual-coding theoryになる境目というか'dual-coding theory'の初出は発見できず。
どうも本っぽいな・・・
Picture Superiority Effectんときに言及した本のうち、
1971年の「Imagery and verbal processes.」がそれっぽい?
1986年の
「Mental representation: A dual coding approach.」のGoogle books()で見られる限りでは4章タイトルがまんまdual-coding theoryなので、少なくともこれより前であるのは確か。
4章見ると、1971年のやつの考えにさらに手を加えたってことらしいから、これをdual-coding theoryの代表としてもよいかもしれない。

上であげたの
以外では、

も候補にあげられそう。
つーかあまぞんにあるんだ・・・すげーなあまぞん。
・・・ただまあ躍起になって初出を探してもあんましメリットがないので、とりあえずdual-coding theoryの引用としてはPaivio (1986)かPaivio & Csapo(1973)でいいのかも・・・
・・・いいのかな?
図書館で本を見つけられたら初出を確認してみてもいいかも。

うーむ。思ったより奥が深いなdual-coding theoryは。
古典もあなどれないぜ!



ーーー追記ーーー
あまぞんさんの

にてなか見!検索が使えることに気づきました。
この中で検索をかけたら、ちゃんとdual-coding theoryって書いてある箇所がありました。
なのでdual-coding theoryの初出は1971年のこの本みたいです。
いやーネットべんりだなー。
謎が解けてよかったよかった。

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