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めもめも ...〆(。_。)

認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。

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ぎゃああああああああ。
『死者の書』
読み終わってしまった。


…やっぱバッドエンドじゃないかー!

……いやホラーなんだから当たり前か。
ハッピーエンドなホラーってなんかあったっけ?

…「アタック・オブ・ザ・キラートマト」?
いやあれホラーじゃないから!コメディだから!

…そうか「バケモノ」発生して退治系は「退治してみんなしあわせになりました。めでたしめでたし」で一応ハッピーエンドになるのか。
…「ゴーストバスターズ」とかな!
だからそれホラーじゃないから!コメディだから!

まあ全滅エンドも当たり前だけどな!


ボケはこれぐらいにしといて、まったり感想いきますかー。
「そんなことしてる暇あるのか」って?
いや余裕ないからこそ幻想小説でぐらつく精神を支えてるんじゃないか!


あらすじは『猫のゆりかご』んときにもちょとふれましたが、うんざりする日常に飽いた主人公が、敬愛する作家の伝記を書こうと、作家が住んでいた町を訪れ、しあわせなこともいろいろあって、でも隠された悪意に気づきはじめ、ひどいめにあいます。
どう「ひどい」かはネタバレなので伏せておきます。
よんでのおたのしみ。


おそろしい。
活き活きとして、軽妙洒脱な語り口が。
繊細に、きがつけばそこにある恐怖を描き出す文体が。
なにこれこわい
決してぐろくなく(まあ人死にの場面は若干ぐろいといえますが、スプラッタではない)、ヒトに襲い掛かる恐怖の生物がいるわけでもなく。
悪意あるファンタジーが、ひたひたと背後にせまるこわさ。
そう、怪談のこわさじゃなくて、ヒトの業の深さに対する恐怖。
すべてがあきらかになったとき、「こうなることはどこかで予想していた」ような気がするのに、結局どうにもならなくて、へなへなと脱力してしまう無力感。
そんなものを、さらりと書いてしまうのですよ。
これはすごい。

そして、その破滅に辿り着くまでの、束の間のしあわせのまぶしいこと!
ひどく憧れに憧れた存在に近づき、認めてもらえるような幸福。
孤独に寄り添うものがある、満たされた幸福。
破滅の匂いを微かに感じながらも、おもちゃを独占するこどものような幸福。
どれも、すとんと胸に入ってくる。
だからこそ、終幕の喪失感のおそろしいことといったら!

これはあかんわ。
これはすごい。
これ高校生の頃に読んでても、すごさわからんかったかもしれん。
学部生の頃に読んでも、「あーすげーおもしろーい」で終わったかもしれん。
何かを手に入れることについての一抹の不安、何かを失うことについての莫大な寂寥感、そんなもんが攻めてくるような年齢で読むとああああああもうね!
やべえ。これはやっべえ!
20代後半以上の方にオススメ!
とくに30代。

津原氏が言及してたように、作中やたらめったらブルテリアがでてきます。
顔がぱんぱんにはれたぶさいくいぬですね。
ぶさいくいぬの中では、日本における知名度はもはやPug(Bugとあえてミススペルしたい)に負けてますが。
ちなみにPugは、粘土でできた犬の顔面を床におとしたような顔しています。
「メン・イン・ブラック」で出てきた宇宙ぶさいくいぬの犬種ね。
どっちもぶさいくでたのしいです。
いや、「ぶさいくでかわいい」って言ってもいいんですが、あのふてぶてしいぶさいくさを見ていると、「意地でもかわいいなんて言ってやらねー」という気分になります。
わたしだけですかそうですか。
ブルテリアのぱんぱんっぷりを知っていると、この本のホラー具合が若干上昇します。
もしこの本を読もうと思っていて犬種に疎い方がいらっしゃれば、ブルテリアの画像検索してから読み始めることをおすすめします。
ぶさいくいぬたのしいなあ!

「ぶさいく」を連呼してますが、わたしはぶさいくいぬが嫌いなわけではありません。
だから、当該犬種を飼っている方、おこらないでね。
むかしわたしの家でもぶさいくBugを飼ってましたから。
もーすげーぶさいくなのなあいつら!
ぶさいくでおなかがつっかえてわたしの膝の上にのぼれないからって、わたしに文句言ってくるんですよぶさいくいぬ!
膝の上にのっけてやらないと文句たらたらなんですよぶさいくいぬ!
のっけてやったら満足げに空気をぺろぺろなめるのが日課だったんですよぶさいくいぬ!
その顔もすげーぶさいくでした。
そういう思い出があるもんで、ペットショップや散歩中のぶさいくいぬを見ると、ちょっかい出したくてたまらなくなります。

……ああああ『死者の書』感想のはずがぶさいくいぬ話に!
いや、そんなかんじにユーモラスなぶさいくいぬがいるなごやかげな風景が、めちゃめちゃに破壊されるというホラーなんですよ。

そして地獄の始まりを告げるラストシーン。
「彼」には、死ぬまでもう安らぎが訪れないのでしょう。

あまぞんレビューやら解説やらでもふれられてますが、故人である憧れの作家の話が、じつにいきいきしていて、本好きなら「わかる!わかる!」と頷きたいくらいです。
その本好き特有の空気を共有できるのって、やっぱしあわせだよねえええ。
ましてや「認められる」ことがあるなんて!
この落差がね。もうね。
あれです。ジェットコースターとかの「のぼり」と「おちる直前」です。
え…あ…こんなんでいいんだ…
え…でもこのあとくるよね…?こないはずないよね…
え…まだ…ああうんまだいいんだ…
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!
と。

いやあこの文体による恐怖の甘美なこと。
おそろしい。
探して2作目も買おう。
こないだ出た新作は保留。

…ええ現実逃避ですが何か?

まあでもこの作者今ウィーン在住らしいし英国幻想文学賞とかなんとかいうやつにノミネートされたかなんからしいし、雑談のネタにはなるかなあ。
…いやジャンル的にはホラーだから場合によってはドン引きですね。

そういえば最近の「まったり」がちっとも科学にふれていない点。
あー。
まあいいか。

どうでもいいけど、もしわたしが研究に絶望して津原氏の伝記を書こうなんてしたら同様にホラーフラグが立ちそうな気がする。
…いやまだそこまで絶望してませんけど。

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