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めもめも ...〆(。_。)

認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。

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一日が週末だったのでひさしぶりに映画館いってきた。
まあ「一日が週末」なことに気付いたのは先月一日(非うるう年だと三月は曜日いっしょだよね)で、先月はしっかり逃してたんですけど。

せっかくだから大画面大音量を楽しむやつにしようぜ!というわけで、わたしには珍しく大作映画を見たのでした。
(ジョニーイングリッシュはある意味大作だけどな)
今回見たのは『ゼロ・グラビティ(原題:Gravity)』。
公式ページはこちら


…いやーこれすごいわ。
これは確かに映画館向きだわ。

ストーリーとしては、そんなに複雑じゃない。
話自体は、ブラッドベリの『万華鏡』と似ている。
というか話だけなら『万華鏡』のが重層的で複雑か。いや身贔屓か。
それなり「ご都合」なところもいくつかある。
しかし、圧倒的な迫力で映像化されたなら屈服せざるを得ない。
要するに、宇宙船の保護をなくして宇宙空間に取り残されるのである。

宇宙には空気がない。
だから音がない。

そういうようなこと(うろおぼえ)がイントロ、字幕で表示される。
そして、それが忠実に映画に反映されるのである。

宇宙空間に出ているとき、主に聞こえるのは宇宙服内の主人公の呼吸と心拍。
隔絶された、内にこもった音。
宇宙船に入れば、自分の外の音が戻ってくる。
宇宙服を着なくてもいいので、呼吸や心拍は響かない。

これを基本ルールとして、緊迫感や不安を煽る音楽が随所につきまとってくる(褒め言葉)のである。
その上、宇宙に出たことを意識せざるを得ない瞬間、無音になる。
ふだん経験しない、音のない世界に放り込まれる。
そして主人公の視界もたびたび現れる。
常に死が迫ってきており、ナーバスにはりつめた主人公の音とともに。
否が応にも主人公の不安がつきささってくる。
気が付いたら本当に手に汗握っている。
こわいのだ、本当に。

ましてやこっちはブラッドベリ読み。
『日付のない夜と朝』みたいな、何も確かなものなどない寄る辺ない無辺の闇を読んできているわけで。
その闇がすぐ隣に。
そしてその闇の中での死がすぐそばに。
かつて読んで慄然とした恐怖が。
こわくないわけがあるものか。

とりあえずブラッドベリ読みじゃない人には、『万華鏡』と『日付のない夜と朝』が読める『刺青の男』をおすすめしておこう。

どっちかは他の短編集にも収録されてたような気がしたけど忘れた。
ちなみに『万華鏡』と『ゼロ・グラヴィティ』は別の結末をたどる。
どちらも美しい。

結末の話をするならば、邦題は失敗だったなーと思う。
いやさすがにネタバレはしませんけど、でも、まあ。
まあ映画みてる間は心臓ばくばくしてて気にする余裕なかったからいいや。

そいや『万華鏡』を思い出したのはわたしだけではなかったようで、検索すると結構言及しているひとも多いようす。
なかには「イリノイ州」もブラッドベリではということを言ってるひともいた(参照)。
いやさすがにそれは…と思ったけど(ブルースブラザーズだってイリノイ州やん!)、ありえそうでもある。
ブラッドベリの描くイリノイ州とアイルランドってやたらすてきな場所だもんなあ。

そんなかんじで、ブラッドベリ読みなら楽しめる(こわがれる)こと請け合いの映画。
いやーこれよかったよ。
音の効果を楽しむためにも、音響装置のすぐれた映画館で見るといいよ。
…ってもう、公開されて長いからわたしの近場の映画館ではそろそろ公開終了になるっぽいけどね。
音を楽しむ映画ですよこれは。
音楽もいいけどSE重点。
水とかね。
ああもう。

そいや映画とリンクしたショートムービーが公開されておるね(わたしが見たのはこのページで)。
映画観終わったあとに見るとまた感慨深いものがあります。
その場で、その生を営むしかないんだよなあ。

おまけといえば公式の宇宙遊泳もなかなかおもしろかった。
画像もすごくきれいなので、これはちょっとあそぶのたのしい。
でも音声は例の緊迫感なアレなので、こわくなってきたら音きったりもした。
なんでかハッブルに近づけないんだけど…バグなのか環境依存のエラーなのか。
コンプしたがりのわたしとしてはそこだけ残念。

しかしCG本当にすごいな。
スタッフロールでもものすごい数の人がCG仕事に従事していた。
CGはそこまで大仕事になってるんだなあ。
スタッフロールのキャストの少なさ、スタッフの多さも見といてほしいくらいだ。
技術ってすごいね。
それだけでもSFマインドを堪能できるよ!


あと、正直に告白すると、はじめてジョージ・クルーニーをかっこいいと思った。
…吊り橋効果といわれたら否定できないけど。
オーシャンズシリーズでは「はいはい、きざなおっさん」としか思わなかったのに。
ていうか、TVや映画の俳優をめったにかっこいいと思わないのに。
今回のジョージ・クルーニーはめちゃめちゃかっこよかった。
『ゴールドフィンガー』ぐらいんときのショーン・コネリーぐらいかっこよかった。
……あれこれわたしがおっさん趣味なのか?
いや映画俳優でかっこいいっつったら若いときのショーン・コネリー鉄板だろ!鉄板どころかキングオブキングだろ!
まあそれはともかく、わたしの好みが「基本的には穏やかで、ふだんは飄々と軽口なんかを叩いていて、どっちかってーと昼行燈なくらいなのに、いざというときはバリバリ活躍してピンチには手を差し伸べてくれるタイプ」なので、今回ジョージ・クルーニーが演じた役どころがぴったり好みにはまったのであろう。
それだけに、それだけにあのシーンは……ああ。
いやネタバレしたくないから詳細は述べないが。
やっぱり美学の感じられるキャラはすばらしい。



そんなかんじで某顔本の観た映画リストにも付け加えておいたんだけど、某顔本のSuggestionはぽんこつすぎるな。
SFマインドあふれる映画もB級の香り漂う映画もすすめてこないんだもの。
単に有名作品だけ出してくるのならいらんぞ。
なんで最初に『アタック・オブ・ザ・キラートマト』を登録するようなやつに『シュレック』とかすすめてくるのか。
せめて『チアリーダー忍者』くらい出してこいや。
まあ映画に限らず顔本の学習はしょぼい(市役所のお知らせをフォローしたら、なぜかわたしのきらいなエッセイストをいつも出してくる。特にゆかりはないのに)ので、期待はしていないのだけど、名作(迷作もか)との出会いってどこにころがってるかわからんからなあ。

まあいいや。またなんか面白いものがあったら見よう。
映画を見た夜、わたしはアモンティリャードの杯を乾した。
無限の夜を隔てた向こう、どこかの想像上の火星にいる、叙情的な宇宙の描き手を偲んで。

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