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めもめも ...〆(。_。)

認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。

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ちょっとバスやら電車やらに揺られる用時ができたので、車窓のおともにSFをつれていったぜ!
そこは論文読むべきじゃないのかとかつっこみどころはあるかもしれないけどきかないぜ!

というわけで、なめくじ都市をすきになろうキャンペーンその2です。
まあ端的にいうとなめくじ都市を舞台にしたSFを読むわけです。
前回はこちら

んで今回読んだのは、前回と同じ作者で、邦題は『未来少女アリス』というもの。



んではいつものよーに感想はつづきのところで。




まあタイトルからして言うまでもないことですが、今回ご紹介するコレはかの『不思議の国のアリス』・『鏡の国のアリス』を下敷きにしております。
ただ単にモティフを借りてくるだけではなく、本家への深い愛を込めてきっちり「黄金色の午後」からパロディーを始め、縦横無尽に地口をちりばめております。
これ和訳するとか・・・本家以上に大変なんじゃね・・・
とかいらぬ心配をしてしまう始末。いやー流石だなあ早川さんは。

んでストーリーのほうも、枠組みだけ言ってしまえばアリスが異界に行く話で、今回の異界はタイトルにあるように「未来」。
ただし、「未来」の某なめくじ都市。
アリスってオックスフォードかそこらに住んでるんじゃなかったっけ?と思うところですが、設定では某なめくじ都市の南のほうに大おば様が住んでいらっさって、アリスはそこにしばらく滞在して「書き方」を大おば様に習うことになっているのでした。
もちろんそこは(たとえアリスの古き佳き時代であっても)「その不愉快な街は、雨と煤煙と騒音だらけで、おまけになにやらだれも知らないものを製造している大きな工場でいっぱいでした」ときた。
作者は実にひねくれた愛情をこの都市に注いでいるようだ。

あ、「未来」といっても、1998年という設定です。
あくまでアリスから見た世界ね。
そういえばこれ何年に出た話なんだろう?と思ったらなんと1996年なんですってよ。
もっと大昔かと思ってた。
前回の『ヴァート』は1993年。
もっと大昔だと思ってた・・・!!!
まあ某国ってけっこー時間が進むのがゆっくりってゆーか。
石造りの建物多いから時間が止まってるよーな感覚がするってゆーか。
いや、ネットの普及スピードが速すぎただけか。
ネットの普及する前と後じゃ、仮想空間ものというかサイバーパンクのリアリティが違ってしまうのはしかたがないよなあ。
ということはとりあえず今はイーガン読んでおけばおkってことだろーかー。
閑話休題。

んで設定にさらにつっこむと、途中まで気づきませんが、これ『ヴァート』と若干世界観かぶってます。
なんせヴァートそのものが出てくるし。異種配合生物もたんと出てくるし。やっぱへびは敵だし。
なんかウィキペディア読むと、『ヴァート』とこれとあと2作品(うち1こは未邦訳)は世界観がかぶってて「ヴァートシリーズ」となってるんだそーなー。
うーむ。シリーズとなると必要以上に気になるのが本読みのサガ。
邦訳あるほうも注文しとこーかなー。
邦訳ないほうは向こういったらあるかなー。
なやみどころ。
またも閑話休題。

まあそんなかんじで(どんなかんじだ)地口に次ぐ地口で、めくるめく違和感の未来都市へアリスは踏み込んでしまうわけですよ。
・・・「うさぎ穴」に相当するものは何かとかそういう情報出してもいいのかもしれんが、なんかこの本はなるべく前情報なしに読んだほうが楽しめるかもしれない。
(あれじゃあこのめもぶろぐ意味なくね?)
ネタの割れてる地口っておもしろさ減っちゃうからなあ。
まあ毎回「ネタバレして未読のひとのおもしろさ減らしちゃったらどうしよう」という不安のためにほとんどストーリーに関すること書かないのですけどね!
(そこまで言うほどの読者がいるぶろぐでもないがな!)
そんなわけでいつもどおりのもどかしい感想をお楽しみください。

あ、一見なめくじと見せかけて実はかたつむりな登場人物いた。
(いきなりのプチネタバレ)
まあ舞台がなめくじ都市だしな。
そしてよく雨が降る。
ちょっと外に出たらすぐ雨が降る。
雨は降るけど雨具への言及はない。たぶんみんな雨具つかわない。
まるで現実のなめくじ都市といっしょだよ!

都市密着っぷりは前回の『ヴァート』よりも今回のが高い。
現に知ってるOxford Rd.が出てきたし。
それ以前に大学も出てきたし。(でも該当する建物がどれなのかはわからん)
あとたぶん庁舎とかAlbert Squreとかは前を通ったことが何回かあるよーな気もする。
ちなみに大おば様の家のあるところは、某都市郊外で、中心部からは空港の方角にあるっぽいので、詳しいところはよくわからんがなんとなーくのイメージはできる。まあひとことで言えば、「郊外」だ。
まあ某国の「郊外」って、情け容赦ない野っ原にひつじやうしがごろごろしてるけど。
ぐぐる先生地球で見たら、そこまで激しい「郊外」じゃなくて住宅地っぽかった。
まあそれも21世紀の姿なので、この本が出たときは情け容赦なくめぇめぇしていた可能性もなくはない。
んでも某国で家を建てる工事ってあんまし見ない(日本だとよくあるのにね)から、もともと住宅地だった可能性のが高いか。
まあWith Ghostsでほんとに家賃あがる国だから古い家に住むほうがうれしいのだろう。
(日本だと「女房と畳は新しいほうが・・・」なんて言うひともいるのにね)
そのへんは文化慣習の違いというやつなのかもしれない。おもしろい。

そういう文脈で「なめくじ都市に親しみを持つ」という当初の目的は、前回のよりも若干達成されたかも。
物語自体もこっちのほーが好みだし。
残る1この邦訳作品は前のに近いかんじらしいから、ちょっとどうするか迷うなあ。
まあでも書痴的蒐集をやらかしてしまうかもしれない。
なにも稀覯本蒐集しようってんじゃないんだからいいよね、とへんな言い訳をしたりしなかったり。
またまた閑話休題。

今回の物語に話を戻すと、やはり魅力はそのけったいな登場人物たちにつきるかと。
おしゃまでそそっかしくてちょいと足りない少女アリス、それに追随するもの、こんがらがりながらも味方してくれるもの、ヒステリックに敵対するものなどいろいろ。
それぞれの登場人物は、それぞれ物語の役割やちょいとした小ネタのための地口で名前や特徴が形成されているので、「これはどういうネタだろう?」とわくわく読み進めるが吉。

もはや「古典」というべき物語を下敷きにしているので、展開そのものにセンスオブワンダーを求めるのではなくて、ちりばめられたネタの向こうに作者のくすくす笑いを意識しながらいつしか自分もにやにやを共有してしまうような、そういう楽しみ方が向いてるのではないかと。
これに近いのって何かなあ、映画好きがにやにやしながら眺めるタランティーノか?タランティーノ見たことないけど。
あ、あとはパロディものゾンビ映画とかか。ゾンビ映画見ないけど。
自分が知ってる例で言うなら、ホームズものか・・・。
ホームズのパロディ(パスティーシュって言ったほうがいいのか?)って、吸血鬼を倒したり冷凍睡眠で蘇ったりストーカーレベルのメール打ったりしたい放題だもんなあ。

あ、あとネタバレしない程度にかすっておくと、ラストのオチ(?)はまあ一種ありふれたものだけれども、これがヴァートシリーズの1つだということを考え合わせれば何か仄めかしっぽいものをちょっと感じる。
基本的にヴァートシリーズは世界観がかぶってるだけで、いわゆるシリーズもののように「全部読んでないと話の流れがわからん」ということはない。なのでどこから読んでも問題なし。
でも、シリーズ他作品を読んでからこのアリスを読むと、作者のにやにやが透けるポイントがさらに増えるようだ。
うっかり読み流しかけてたけど、今回のと前回のとで、とある超重要人物の名前が同じなんだよね・・・。
えっそれってもしかして、という推測(という名の妄想)がもくもくと立ち上がるよーな。
ひょっとしてもう1この物語(あるいは未邦訳のほう)でその推測/妄想に関する秘密が明かされるのでは?
なんて思っちゃうとああもう気になって気になってしょうがない。
ひょっとしたらこれはそういう「うさぎ穴」なのかもしれない。

まあでもあれだ、本読みってたいがい自分の「うさぎ穴」持ってるよね。
それも複数。
あああひょっとして今自分の「うさぎ穴」増やしちゃったのか。
ううむ。これはしかたがない。しかたがないぞう。
本読みって本当しかたがないやつだな。

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