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めもめも ...〆(。_。)

認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。

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例の「火星DASH村」と評判の高い映画の原作、『火星の人』を読んだ。

わたしは映画のほうを先に見たから、映画も存分に楽しむことができた(たいていの原作付き映画は、原作を先に読んでるといろいろと思うところが出てくるものである)。
たしかに、ネットで言われてたように、映画はいろいろなところを削っている。まあ映画はどうしても尺の都合があるもんね。
たとえばジャガイモ凍っちゃっても食えるじゃん!みたいな指摘は、映画では妥当だけど原作ではきっちり凍ったのも食べている。あとそんなに農業主体じゃない。エンジニアとしてさまざまな機械に向かっていく描写のほうが多い。まあ当たり前っちゃ当たり前だけど。
そういう点から、解説ではこれを「ハードSF」に分類しているが、まあその分類も妥当かもしれない。
ただイーガンを読みなれた読者がイメージする「ハードSF」より、これは圧倒的な人間賛歌だ。それもかなり純粋な。
どれくらい手放しかというと、ソフトSF、へたしたら「すこしふしぎ」ものと言われるブラッドベリの人情ものに並ぶくらい。悪意のある人物は登場しない。ただひたすら、火星で生存する&地球に帰還するための問題解決に取り組んでいく。
解説にも、悲惨な偶然で主人公を困らせるプロットにはせず必然性のある困難に向かわせるようにしたという作者の創作態度が説明されている。
解説ではこの創作態度が類似しているものに「ゼロ・グラビティ」を挙げているが(それでもあれは物理に疎いわたしですら首をひねるところがあったけれども)、日本人であるわたしは「シン・ゴジラ」のヒットを連想してしまう。こちらも悪意を持って主人公たちを妨害するものはいなかった(しいていうならゴジラそのもの?いやあれは悪意じゃないだろ)。ありうる困難に、手持ちの材料で立ち向かっていく人間の姿を描いた映画は、個々の登場人物の人生だの恋愛模様などなくても、十分に人間を讃えるものだった。
『火星の人』も、恋愛沙汰が一切絡まないかっていうとまあそれっぽい話はなくもないが(映画では省略されてた)、一切本筋に絡まない。ただ個人が/組織が問題解決に取り組む姿勢をひたすら描くことで、何等かの福音のような人間賛歌になっているのだ。
こういったシンプルな人間賛歌が受け入れられる社会情勢というのも考察のしがいがあるとは思うが、あまり飛躍をするのも野暮ってもんだろう。
それよりも着目すべきは、淡々と機械の修理(そして改造)を行うというシンプルなあらすじが、いかに魅力的に描かれているかではなかろうか。
それは前述の「必然性」もそうなんだけれど、何よりもふんだんにもりこまれたユーモアのなせるところが大きい。危機に追い込まれて毒づいたりはするものの、それに対するちょっとしたギャグを忘れない描写のせいで、シリアスな場面なのに噴き出してしまう箇所がいくつもある。
こういうパーソナリティーこそが、宇宙開発には必要なのかもしれない。まあそんなにそこらじゅうにいるパーソナリティーとも思えないけど。
宇宙に行くための「こころ」が問題になるんだなあ。
漫然と英雄譚のように感じられていた宇宙開発も、ずいぶんとリアリティをもって語られるようになったんだなあ。単にわたしが大人になっただけかもしれんが。
JAXAとかもたまに宇宙内での研究計画とか募集してるもんな。
いつかそんなんに応募できるようなネタに取り組めたらいいなあ。
素直にそんなことを考えてしまうほど、これは純粋な人間賛歌だった。
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