めもめも ...〆(。_。)
認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。
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というわけで決断的にSFを読む。
まずは伊藤計劃『ハーモニー』だ。
買ってからしばらく積んでたやつですね。
同じ作者の前作『虐殺器官』に関しては以前の記事を参照のこと。
(前の記事)
まあ『虐殺器官』は名作という噂が高かったものの、『ハーモニー』については賛否両論なイメージがあったので、そんなに急いで読まなくてもいっかー…となってたのは事実。
とはいえ、読んでみたらこれもなかなか面白い。
とくに心理屋さんにとっておもしろいポイントが豊富。
かえすがえすも筆者の夭折が惜しまれる。
『ハーモニー』を賛否両論たらしめている要因のひとつはおそらく、HTMLをパロったETMLという記述方法だろう。
今日びHTMLもへったくれも…と思うかもしれんが、これが発行されたのは2008年…ってまあHTMLへったくれな「現在」に分類できるか一応は。
とりあえずHTMLっぽいところ無視して読み進めてもまったくかまわないので、「HTMLとかいじったことないからわからない」というひともがんがん読めばいいと思います。
正味HTMLと共通してるのって箇条書きくらいだし、箇条書きがわかったからといってこの物語の味わいが深くなるわけでもなし。
あとも1こあげるならば、登場人物のキラキラネーム感か。
日本を舞台にしててこれか、というキラキラっぷり。
まあ2008年ならそういうのがネタとして定着し始めた時期なのだろうか?
(参照:このページ)
最近は「DQNネーム(笑)」という反応がメジャーになってある程度の揺り戻しがきているようだけど、揺り戻しがなく珍名奇名がどんどん普及していったら…『ハーモニー』の世界のような名前が普通になると想定されたのかな。
なんせ「トァン」だの「ミァハ」だの「キアン」だのだもんな。
元ネタがあるのかもしれないが、小文字ぁぃぅぇぉが名前に入る日本人名にはちょいとびっくりした。
まあ、学部生が質問メールに「ょろしくぉねがぃします」とか書いちゃう世の中だしな…(この話は特定の個人・団体とは関係がありません。念のため)
元ネタあるんかなって検索したら元ネタ見つからなかったかわりにミァハbot(これ)見つけてしまったよ!この人工無能め!
あとぐーぐる先生はネタバレ慈悲はないイヤーッ!なお方なので読了前の検索はおすすめしない。
まあそれはともかく、『ハーモニー』は前作『虐殺器官』と世界観を共有していて、というより『虐殺器官』の数十年未来を舞台にしているので、前作を読んでいるとより深く楽しめます。
まあ読んでなくても楽しめますが。
ただ、前作の主人公の狙いは達成されたのか?という疑問に答えるような箇所もあるので、2冊とも読むのなら『虐殺器官』→『ハーモニー』の順がおすすめ。
『虐殺器官』は、ポスト911のわれわれが生きてる世界の延長上にある世界だったけど、『ハーモニー』のほうは『虐殺器官』での変容を経たさらに未来なのでもはや別世界感がつよいですね。
対比で言うなら『虐殺器官』は「おとこのこのはなし」ですが、『ハーモニー』のほうは「おんなのこのはなし」だともいえるかもしれない。
闘争の男性性、同調の女性性。
やや暴論ではあるけども。
これは高度に発達した医療福祉社会、そこに入ることが義務付けられているこどもたち、そしてそこでもがいているおとなたちの物語であり、フーコーなんか持ち出すまでもなく(まあ出てくるんだけども)「健康」「幸福」が定義づけられ権力と化した社会の物語なんだけども、筆者は病床でこれを書いたのかと思うとより一層悲痛さが増すというか、いったいどんな精神を持てば死を目前にしてこんな医療ディストピアが描けるというのか。
つい「ディストピア」って断じてしまったけども、これはブコウスキーやジョナサン・キャロルの側にいるわたしの私見であって、生存だけを考えるのであれば高度医療福祉社会というのは理想的ともいえる。
理想をつきつめてこそのディストピアなのか。
ともかく、『木でできた海(前めも参照)』の冒頭を読んでニヤッとできる御仁、おともだちになりましょう。
『ハーモニー』はあの冒頭で眉を顰める紳士淑女のための福祉社会を描いているのだ。
んでもって、主人公トァン、そして彼女の思想形成に多大なる影響を及ぼしたキァハは、「われわれ」側なわけで、早い話がはみだしものなわけです。
そのはみだしものがはたしてどこまではみだせるのか、あるいはニンジャスレイヤーでいうところ(また始まった)のブッダの手のひらの上のマジックモンキーめいてはみだせないのか、という物語でもあるわけですな。
少年少女の青臭さでもあり、成人の諦念との戦いでもあるわけです。
さてそろそろネタバレ無礼講といこうか。
まずは伊藤計劃『ハーモニー』だ。
買ってからしばらく積んでたやつですね。
同じ作者の前作『虐殺器官』に関しては以前の記事を参照のこと。
(前の記事)
まあ『虐殺器官』は名作という噂が高かったものの、『ハーモニー』については賛否両論なイメージがあったので、そんなに急いで読まなくてもいっかー…となってたのは事実。
とはいえ、読んでみたらこれもなかなか面白い。
とくに心理屋さんにとっておもしろいポイントが豊富。
かえすがえすも筆者の夭折が惜しまれる。
『ハーモニー』を賛否両論たらしめている要因のひとつはおそらく、HTMLをパロったETMLという記述方法だろう。
今日びHTMLもへったくれも…と思うかもしれんが、これが発行されたのは2008年…ってまあHTMLへったくれな「現在」に分類できるか一応は。
とりあえずHTMLっぽいところ無視して読み進めてもまったくかまわないので、「HTMLとかいじったことないからわからない」というひともがんがん読めばいいと思います。
正味HTMLと共通してるのって箇条書きくらいだし、箇条書きがわかったからといってこの物語の味わいが深くなるわけでもなし。
あとも1こあげるならば、登場人物のキラキラネーム感か。
日本を舞台にしててこれか、というキラキラっぷり。
まあ2008年ならそういうのがネタとして定着し始めた時期なのだろうか?
(参照:このページ)
最近は「DQNネーム(笑)」という反応がメジャーになってある程度の揺り戻しがきているようだけど、揺り戻しがなく珍名奇名がどんどん普及していったら…『ハーモニー』の世界のような名前が普通になると想定されたのかな。
なんせ「トァン」だの「ミァハ」だの「キアン」だのだもんな。
元ネタがあるのかもしれないが、小文字ぁぃぅぇぉが名前に入る日本人名にはちょいとびっくりした。
まあ、学部生が質問メールに「ょろしくぉねがぃします」とか書いちゃう世の中だしな…(この話は特定の個人・団体とは関係がありません。念のため)
元ネタあるんかなって検索したら元ネタ見つからなかったかわりにミァハbot(これ)見つけてしまったよ!この人工無能め!
あとぐーぐる先生はネタバレ慈悲はないイヤーッ!なお方なので読了前の検索はおすすめしない。
まあそれはともかく、『ハーモニー』は前作『虐殺器官』と世界観を共有していて、というより『虐殺器官』の数十年未来を舞台にしているので、前作を読んでいるとより深く楽しめます。
まあ読んでなくても楽しめますが。
ただ、前作の主人公の狙いは達成されたのか?という疑問に答えるような箇所もあるので、2冊とも読むのなら『虐殺器官』→『ハーモニー』の順がおすすめ。
『虐殺器官』は、ポスト911のわれわれが生きてる世界の延長上にある世界だったけど、『ハーモニー』のほうは『虐殺器官』での変容を経たさらに未来なのでもはや別世界感がつよいですね。
対比で言うなら『虐殺器官』は「おとこのこのはなし」ですが、『ハーモニー』のほうは「おんなのこのはなし」だともいえるかもしれない。
闘争の男性性、同調の女性性。
やや暴論ではあるけども。
これは高度に発達した医療福祉社会、そこに入ることが義務付けられているこどもたち、そしてそこでもがいているおとなたちの物語であり、フーコーなんか持ち出すまでもなく(まあ出てくるんだけども)「健康」「幸福」が定義づけられ権力と化した社会の物語なんだけども、筆者は病床でこれを書いたのかと思うとより一層悲痛さが増すというか、いったいどんな精神を持てば死を目前にしてこんな医療ディストピアが描けるというのか。
つい「ディストピア」って断じてしまったけども、これはブコウスキーやジョナサン・キャロルの側にいるわたしの私見であって、生存だけを考えるのであれば高度医療福祉社会というのは理想的ともいえる。
理想をつきつめてこそのディストピアなのか。
ともかく、『木でできた海(前めも参照)』の冒頭を読んでニヤッとできる御仁、おともだちになりましょう。
『ハーモニー』はあの冒頭で眉を顰める紳士淑女のための福祉社会を描いているのだ。
んでもって、主人公トァン、そして彼女の思想形成に多大なる影響を及ぼしたキァハは、「われわれ」側なわけで、早い話がはみだしものなわけです。
そのはみだしものがはたしてどこまではみだせるのか、あるいはニンジャスレイヤーでいうところ(また始まった)のブッダの手のひらの上のマジックモンキーめいてはみだせないのか、という物語でもあるわけですな。
少年少女の青臭さでもあり、成人の諦念との戦いでもあるわけです。
さてそろそろネタバレ無礼講といこうか。
この物語の醍醐味、それは「意識の消滅」ですね。
いやまあホメオスタシスをサーバ管理したりあざむいたりも十分に面白いんですが、それ以上におもしろく終末を飾るのにふさわしいアイディアとして「意識の消滅」を持ってきたあたりに脱帽せざるを得ない。
「意識」=「自由意志」って話は、まあ意識学会系の話で聞かなくもなかったけど。
まさか、「意識の消滅」=「完全な合理化」=「感情の消滅」とか。
それゆえのETMLとか。
ニンジャスレイヤーだったら(またか)ゴウランガ!ゴウランガ!連呼するところだわ。
その発想はなかった。これはまさにセンスオブワンダーだわ。
妥当性はともかくとして、しっかりセンスオブワンダーを味わえたことが喜ばしい。
んでもって意識の消滅が進化の一方向として示されるとか。
もう本当にセンスオブワンダーですよ。
いやあSFっていいものだなあ。
で、だ。
心理学やら神経科学やらやってるなら当然気になるよね?
妥当性が。
「SFなんだからおとなげないこと言うな」という立場を基本的にわたしは採用しているのだけど、まあSF解説にその手の専門家がついたりする昨今(ほら『宇宙消失(前めも参照)』にも物理学者の解説ついてたじゃん!)、ちょっと論じるくらいはよいでしょう。
進化とこころを論じるうえで鍵となってくるのは、おそらく「感情」だろうと思うのだけど、それは戸田先生のアージ理論なんかを読んでわりと進化と感情について論じる土台があることを知ってるからだろうなあと思う。
まあでも感情は進化上生じた情報処理っていうのはわりと納得いく気がするんだよねー。
んで、「感情が非合理なのはすでに環境が変化したせい」という理屈もそれなり筋があるような気がしてる。
ならば、感情が退化していくのは進化として当然のことだろう。
一方、「意識」と「進化」もそれなり議論がされてるんじゃないかな。
「意識」のほうは比較心理学的にも論じられていたような気がするんだけど、文献が思い出せないので今はパス。
今度そのへんにくわしいひとに聞いてみよう。
まあようするに、「意識は進化の系統のうちどの時点で生じたか?」って議論は前からあったはずだよな、と。
ただ、意識があることのメリットはたぶんメタ認知とかじゃないかなー、と思ってるので、意識は収斂進化だったとしてもおかしくないと思う。
その場合「他種の意識はヒトの意識と同じものなのか」「そもそも同じかどうかってどうやって定義するのか」という議論をせねばならんけどまあ今回はスルーで。
んで、この物語のギミックの妥当性を論じる上では、「意識」と「感情」は不可分あるいは因果関係にあるかどうかが問題なんだよなー。
意識があるところにしか自由意志が発生しないのか?
感情は自由意志などの選択のノイズのひとつでしかないのか?
意識がないところには感情は発生しないのか?
やっぱ「意識」の問題はめんどくさいな…
そもそも「意識」って何なのかというところから始めないといけないしな(実際、同じ「意識」という単語をつかってても明らかに意味してるところが違うまま議論しているのを見たことがある)。
定義をクリアせずにする議論ほど不毛なもんもないしな。
問題提起はしたものの、答えにはちょっと到達できなさそう。
…まあ議論としてはおもしろいので、『ハーモニー』読んでて「意識」論に興味のあるひとを見つけたら聞いてみてもいい。
……あんまりわたしのまわりにはおらん気がするけど。
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カテゴリ説明
もっさり:日々の雑感をもっさり。
がっつり:論文や研究関連をがっつり。
びっくり:科学ニュースでびっくり。
まったり:空想科学などでまったり。
ばっかり:デザイン系自己満足ばっかり。
ほっこり:お茶を嗜んでほっこり。
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分野は視覚認知。視知覚にがて。
あと記憶全般。
カテゴリ (semanticsか?) とかも。
最近デコーディングが気になる。
でも基本なんでもこい。
好奇心は悪食。
好きな作家(敬称略)
川上弘美
小林秀雄
津原泰水
森茉莉
レイ・ブラッドベリ
イタロ・カルヴィーノ
グレッグ・イーガン
シオドア・スタージョン
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