めもめも ...〆(。_。)
認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。
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なんかいろいろうまくいかないから論文よむ。
今日読むのこれ↓
Scene congruency biases Binocular Rivalry
Mudrik, Deouell & Lamy
Consciousness and Cognition, in press
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21306920
左右視野別々に画像を提示する「両眼視野闘争」の方法で、風景写真のぱっと見ーがいかに注意やら意識やらにはたらきかけているかを示すよ、という研究。
まあ興味もてたら読んでみなせえ。
ざっくり読んだ中身は「つづき」で。
今日読むのこれ↓
Scene congruency biases Binocular Rivalry
Mudrik, Deouell & Lamy
Consciousness and Cognition, in press
www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21306920
左右視野別々に画像を提示する「両眼視野闘争」の方法で、風景写真のぱっと見ーがいかに注意やら意識やらにはたらきかけているかを示すよ、という研究。
まあ興味もてたら読んでみなせえ。
ざっくり読んだ中身は「つづき」で。
イントロあたりをざくざくっとまとめてしまう。
風景はぱっと見ーでだいたい「どんなかんじ」かというのがわかってしまう。
英語ではその「どんなかんじか」というのをgistという。邦訳はまだない。
たぶん日本で風景関連の研究してるひとが少ないからだろう。
「あなたが邦訳考えればいいじゃない!」ととある先生に言われたことがあるが、うまい言い回しが思いつかないので保留。
そもそもsceneの邦訳も、「シーン」「風景」「光景」「情景」とあって無秩序極まりない。
検索がすごいめんどう。
まあそんな話は脇道なのでどうでもいいですね。
まあその風景のgist(どんなかんじか)についてはおもしろい研究がいくつかあって、イントロで紹介されているのは「gistにそぐわないオブジェクトは、その場にふさわしいオブジェクトとちょっと違う反応されるよ」というタイプの研究。
例をあげるならば、台所という風景に食器というgistに合致するオブジェクトがある場合と、電信柱というgistに合致しないオブジェクトがある場合とで違うよ!ということさ。
どう違うか、については
○gistに合致しないオブジェクトはそれが何か判断するのに時間かかる (Bar & Ullman, 1996; Davenport & Potter, 2004; Palmer, 1975)
○gistに合致しないオブジェクトはそれが何か正確に判断しにくい (Biederman, Rabinowitz, Glass & Stacy, 1974; Boyce, Pollatsek & Rayner 1989; Underwood, 2005)
○↑そうでもない (Hollingworth & Henderson, 1998)
○眼球運動測定すると、gistに合致しないオブジェクトへの停留時間長かったり早い段階で注目してたりする (De Graef, Christians & Dydewalle, 1990; De Graef, Detroy, & Dydewalle, 1992; Friedman, 1979; Loftus & Mackworth, 1978; Underwood & Foulsham, 2006; Underwood, Foulsham, van Loon, Humphreys & Bloyce, 2006; Underwood, Templeman, Lamming & Foulsham, 2008)
○Change Blindness(風景写真に変化に気づかないという例のアレ。以前紹介したデモ参照)でも、gistに合致しないオブジェクトの変化なら気づきやすい (Hollingworth & Henderson, 2000)
というわけで、gistに合致しないオブジェクトというやつはなんか特別な影響を被ってるみたいなんだが、どういう仕組みだろう?というのが問題提起。
仮説は2つ。
○注意ひきつける説
風景みてるときに各構成要素の情報とともにgistが超高速で抽出されよる (Carr, Mccauley, Sperber & Parmelee, 1982; Oliva & Schyns, 1997, 2000; Oliva & Torralba, 2006)
↓
なんかへんなやつがある!ふしぎ!
すぐにgistと合致しないオブジェクトが検出される (Loftus & Mackworth, 1978; Underwood, et al. 2008)
↓
ふしぎ!だから注意がひきつけられる
↓
ふしぎなオブジェクトの詳細をもっと知らなくちゃ・・・
↓
眼球運動の停留時間長くなったりする
なんかつじつまあわない実験結果あるけど、そこはたぶん実験の不備だよってUnderwood et al. (2008) に書いてあった。
○注意はなれなくなる説
風景ざっと見る
↓
偶然か、あるいは物理的にめだつ(輝度やら色やらがちがうとめだつ)かでgistに合致しないオブジェクトに目が留まる
↓
なにこれ!ひょっとしてgistに合わなくね?ふしぎ!
注意がはなれなくなる
↓
ふしぎなオブジェクトの詳細をもっと知らなくちゃ・・・
以下同じ
まあ要するに最初っからgistわかってて注意をひきつけるのか、それとも注意がいってからgistに合致しないことに気づいて注意がはなれなくなるのか、いわゆる「意味情報」の活躍ポイントが違うわけだ。
前者は最初っから、後者は後から。
んで、どっちかなーというのを調べるために「両眼視野闘争をつかうぜ(キリッ)」ということらしい。
左右に違う画像を提示する両眼視野闘争では、一方が知覚されるともう一方はconscious awareness(意識?あれconsciousnessとawarenessって使い分けるもんじゃなかったっけ?)にはのぼらないものらしい。
詳しいことが知りたいよいこはBlake & Logothesis (2002) やLeopold & Logothesis (1999) やSterzer, Kleinschmidt & Rees (2009)などを読もう!
左右の画像のめだちぐあいがだいたいおんなじだったら、どっちの画像がみえやすいとかとくにないっぽい(Fox & Herrman, 1967; Lehky, 1995; Levelt. 1965)
でもどっちかがめだちやすいかんじだとめだつ方がだいぶ見えやすくなる(Blake & Logothesis 2002)。
この方法でいろんな特性でのめだちやすさ比較研究があるよ。
・コントラスト (Levelt, 1995; Mueller & Blake, 1989)
・輝度 (Fox & Rache, 1969; Kakizaki, 1960)
・動き (Breese, 1909; Wade, de Weert & Swanston, 1984)
・空間周波数 (Fahle, 1982)
・感情価 (Alpers, 2009)
・個人的な関心 (Gilson, Brown & Daves, 1982; Kohn, 1960)
・認識しやすい顔 (Jiang, Costello & He, 2007; Yu & Blake, 1992)
あとトップダウンの注意の影響とかも研究されてるらしいがまだ喧々諤々議論中らしいんで省略。
それとawarenessとの関係も議論されてるらしい (Kentridge, Nijboer & Heywood, 2008; Koch & Tsuchiya, 2007; van Boxtel, Tsuchiya & Koch, 2009; Wyart & Tallon-Baudry, 2008。このへんは結構新しいの多いね。流行だからか?)。
まあそんなわけで、gistに合致するオブジェクトしかない風景とgistに合致しないオブジェクトが含まれる風景とで両眼視野闘争の実験をするよ。
まあたぶんgistに合致しないオブジェクトがあるほうが優勢になるだろう。
優勢になりぐあいは左右の画像がまざらずに一方だけが見えてる時間で決める。
注意ひきつけ説があってるなら画像提示してすぐぐらいにgist合致しないオブジェクトのほうが見えるし、ちょっと注意がよそに向いても何度もgistに合致しないオブジェクトに戻ってくるだろう。
注意はなせない説があってるなら、gist合致しないオブジェクトが見えてる時間がだいぶ長くなるんじゃね。
だいたいそんなかんじ。
というわけで実験1。
実験参加者14人。
うち4人左利き。
17インチのCRモニタでリフレッシュレート100Hzで、E-primeつかって提示。
鏡をつかったステレオスコープなるもので画像をみてもらうことになる。
刺激は43セットの画像。
画像はフォトショで中心となるオブジェクトがgistに合致するものと合致しないものとに作りかえられてる。
例として出てたのは海でサーファーがサーフボードにのってるやつvs.ドアにのってるやつとか。
リビングでマグカップから飲み物のんでるvs.ブラシで飲み物のんでるとか。
輝度とかそこらへんの物理的特性もフォトショで調整済み。フォトショすげえ。
あとSaliency Map (Itti & Koch, 2000) とかもチェック済み。
色や空間周波数の成分もNeumann & Gegenfurtner (2006) の方法で調整済み。
3試行練習やって40試行本実験。
画像が見えたら右矢印ボタン押して、見えてるオブジェクトを口頭で報告してもらう。
画像の見えが変わったら左矢印ボタン押し。口頭報告必要なし。
2つの画像がまざってみえたら上矢印ボタン押し。
んで優勢具合を算出するスコアの定義とかあるけどめんどいのでパス。
詳しく知りたい方は論文見てください(なげやり)。
結果。
やっぱgistに合致しないオブジェクトがあるほうが優勢スコア高し。
んが問題はそこではない。
gistに合致しないオブジェクトのほうが見えてる時間、やっぱし長し。
つまり注意はなせない説の可能性高し。
gistに合致しないオブジェクトのが見える回数と合致するオブジェクトが見える回数には有意差なし。
あと最初に見えるのはどっちか、についても有意差なし。
つまり注意ひきつけられ説の可能性低し。
というわけで注意はなせない説の勝ち。
続いて実験2。
実験1の結果は、gistに合致しないオブジェクトが見慣れないものだったからかもしれない。
じゃあ本実験する前にオブジェクト画像しっかり見せて見慣れたものにしてしまえばよくね?という発想。
実験参加者18人。うち一人が左利き。
だいたい実験1とおなじ。
ただし実験始めるまえに、白背景にオブジェクトあるだけの画像みせとく。
オブジェクトの命名もさせてこれでもう「元々そのオブジェクトよくわからんのじゃね」という反論はさせないんだぜ!
といったところか。
結果。
実験1とおなじ。
よかったよかった。
続いて実験3。
実験1・2の効果が、「gistに合致しない」ことによるものなのか検証しようず!
背景が意味のない画像でも同じ結果になったらどーしよー。
ということで背景をおんなじ輝度やら色やら空間周波数成分やらの無意味画像に変えておんなじ実験やってみたの巻。
実験参加者18人。うち3人左利き。
刺激画像かわってるくらいであとは実験1に同じ。
結果。
なんということでしょう・・・!
あんなにあった有意差がなくなってしまったのです・・・!
3指標全部有意差なし。
ということで、背景となる風景のgistが、gistに合致しないオブジェクトの画像が優勢になる効果を生み出していたのでした。
めでたしめでたし。
というわけで、gistというのは結構知覚にがんがん影響を与えているものなのだよ。
ガチ知覚といえどもsemanticsを無視すべきではないのだよ。
しかし意味情報処理思ったより早くないのな。
gistに合致しないオブジェクトの特殊さは注意をとらまえてはなさない効果によるものなんだね。
とかまあそんなかんじ。
今日はこんくらいにしといてやるわー。
(某M.I.氏風に)
しかし両眼視野闘争ってこんな話にも使えるのか。
ちょっとおもしろいと思った。
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びっくり:科学ニュースでびっくり。
まったり:空想科学などでまったり。
ばっかり:デザイン系自己満足ばっかり。
ほっこり:お茶を嗜んでほっこり。
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ここでいうgistというのはcontextもしくはcontext effectと同等のものでしょうか?
いただいた
>ここでいうgistというのはcontextもしくはcontext effectと同等のものでしょうか?
という質問につきましては、contextをどう捉えるかによって答えが変わってきます。
この論文のようにscene画像のgistというときは、そのsceneの意味的文脈を指しますが、知覚・認知心理学全般でcontextというときはもう少し対象が広くなります。
例えば視覚的探索における文脈手がかり (contextual cue) は、まわりにある図形の配置をcontextとしています。
まあ語義・語源からいっても何かしらのターゲットと共にあるものはすべてcontextなわけですね。
その中でscene gistといえば、あくまで意味的なcontextを指すケースがほとんどだと思います。ただscene画像の意味的なcontextというのはかなり初期知覚で得られている部分も大きいようですので、厳密に切り分けることは難しいですね。
ふわっふわの回答になってしまいますが、ご参考になりましたら幸いです。