めもめも ...〆(。_。)
認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。
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チャペックの山椒魚戦争よんだよー。
数少ない岩波文庫に入っているSF。ってかこれ以外に岩波さん収録のSFってあったっけ。
カルヴィーノとかがそうか。
まあいいや。とりあえず古典SFですよ古典SF。
レトロフューチャーですよ。
ざっぱなところのあらすじはタイトルのとおり、そして世間に知られているとおり、山椒魚が文明もって(まあこれを文明って言ってしまっていいのかどうかわからんけども)戦争に至る話ですよ。
まああらすじだけおっかけたところで今更感はげしいのですが。そこはこちとら文体もぐもぐラヴァー、話運びは大いに楽しむことができました。
『山椒魚戦争』は一貫した主人公・語り手の物語ではなく、資料の集大成という体で編まれているので、山椒魚に関するいくつかのエピソードをばらばらに読んでいくことになります。
解説によるとそれぞれの寄せ集めっぷりを見せるために、原本のほうはフォントやら文字色やらいろいろ工夫されていたらしいのですが、岩波さんのは文庫の制限があってそれを再現できなかったそうな。
そこだけは残念なところ。
とはいえ、レトロフューチャーといえど各エピソードはそれぞれぴりりと皮肉が聞いていて、読んでいて思わず笑ってしまうこともしばしば。
わたしの特にお気に入りな箇所は以下のエピソードですね。
1)最初のほうのエピソード、若者たちが単語を学習した山椒魚に出会うところ。
これはもう爆笑もの。
ゾンビ映画の序盤にジョックが惨殺されるのをげらげら笑っちゃう人はこのエピソード好きなんじゃないかな。
まあ山椒魚によるジョックの惨殺を期待すると肩すかしをくらうんですけど(ネタバレごめん)、ゾンビ映画のジョックパートで描かれるような若者の莫迦っぷりと欺瞞と微かに芽生えだすそれらへの自覚がふんだんに盛り込まれていて楽しめます。
このエピソードの最後のオチ、わたしは本当にげらげら笑い出してしまうくらい好きですね。
若いってのはそういうことだよなあ、と。
2)山椒魚に”精神”はあるかと各界の有識者が論じるエピソード
まあわたしも心理屋さんなので、そういうエピソードがあれば気になるしやっぱ面白いよね!
戯画化された研究者たちの議論は、若干露悪的なところもあるんですが、まあ方法論の限られてた時代だし仕方ないよねー感と、にしてもこんな言われようか…というしょっぱさともないませになって、なかなかシニカルな気持ちになって楽しめます。
それにこのエピソードの白眉は各界著名人が「山椒魚に精神があるかないか」コメントした体のアンケートですよ。
トスカニーニとかバーナード・ショーとかメイ・ウェストとか、その時代の実在の人物とおそらく架空の人物が入り乱れてコメントするんですけどこれがまあいかにもそれっぽいんですよ。
まあ基本的に山椒魚の精神の存在を否定するスタンスなんですが、それぞれの立場からどう答えるか、それは転じてそれぞれの立場における「精神とはいかなるものか」という考えを反映しておるんですね。
こりゃもう笑わずにはいられませんよ。
必見です。
3)ラスト
これはもうネタバレに次ぐネタバレなのであえて詳しい内容は言いませんが、古典と思って油断してたらそうくるのかよ!と。
まあ多くは語りますまい。
こればっかりは、初見の楽しみを奪うと何にもならないからねえ。
まあそんなかんじで古典ながらなかなか楽しめました。
チャペックといえば「ロボット」という単語の生みの親としても有名ですが、『山椒魚戦争』は「ロボット」初出となる『R.U.R.』と共通したモティーフであるそうな。
いわゆる「ディストピアもの」ですね。
チャペックの生涯とその時代からいってディストピアものになるのは当然の帰結なんだけど、それにしても時代を超えて、知的生命体や知的機械に対するいわれなき(根拠が挙げられてる場合もあるけど)恐怖ってのがいろんな作家に描かれるのはどういうわけか。
たしかブラッドベリにも、友好的で知能も高いけど見た目は巨大なクモっていうエイリアンを見た目が生理的に無理とかいう理由だけで虐殺する短編あったし。
やっぱキリスト教系の、「ヒトは神様の似姿として創造され、ヒト以外の被創造物はヒトのために存在する下等なもの」みたいな世界観が根強いのか。
日本みたいなアニミズムがつよくて「一切衆生悉有仏性」なんて考え方が出てくるようなところでは、『ドラえもん』とか『チンプイ』なんだよなあ。
(実は『チンプイ』はよく知らないのだけど)
いやまあキリスト教圏にも『E.T.』とか『グレムリン』とかあるけどね。でもどっちかってーといわれなき恐怖を示すのが多い気がする。
知らんもんが怖いのは当然っちゃー当然なんだけど。
そのへん、『Paul』でも最初の出会いはいわれなき恐怖が端的に描かれていたしなあ。
(過去めも参照)
ヒト以外の知的な何か=怖いもの、って知識が流布しているのではないかと。
それってあんまりうまくない態度だと思うんだけどなあ。
とりあえずこういうときは「イルカが攻めてきたぞ!」って言っておけばいいような気もする。
山椒魚に話を戻すと、実はわたしこれを読んでいる間なぜか山椒魚のイメージがずーしーほっきーで固定されてしまっていた。
(公式参照のこと。なお、画像集のほうがイメージしやすいかも)
山椒魚の体色は黒いって描写してあるだろ!いい加減にしろ!
とはいえ、色以外の描写からイメージされるあたまのかんじ、手足のかんじ、そして得体のしれないかんじが、ずーしーほっきーみたいな絵だとしっくりくるんだよなあ……
「山椒魚くらい別にこわくないだろ」と思ってしまうわたしみたいなやつは、ずーしーほっきーイメージして読むと、登場人物のぞわぞわ感が楽しめるかもしれない。
ずーしーほっきーがフリー素材としてつかえたら(公開されてる画像を編集するのはNGみたい)、黒塗りして山椒魚イメージ図作れるんだけどなー。
結論:ずーしーほっきーやっぱこわい。
あと、山椒魚の骨がヒトみたいに見えるっていわれた事件のことは前から知ってたんだけど、これ読んでも検証記事読んでも「それはねーよ……」ってなる。
山椒魚かわいいのにね。
さて、京都水族館にでも行って山椒魚を見てくるか。
(画像はちょと古いの)
数少ない岩波文庫に入っているSF。ってかこれ以外に岩波さん収録のSFってあったっけ。
カルヴィーノとかがそうか。
まあいいや。とりあえず古典SFですよ古典SF。
レトロフューチャーですよ。
ざっぱなところのあらすじはタイトルのとおり、そして世間に知られているとおり、山椒魚が文明もって(まあこれを文明って言ってしまっていいのかどうかわからんけども)戦争に至る話ですよ。
まああらすじだけおっかけたところで今更感はげしいのですが。そこはこちとら文体もぐもぐラヴァー、話運びは大いに楽しむことができました。
『山椒魚戦争』は一貫した主人公・語り手の物語ではなく、資料の集大成という体で編まれているので、山椒魚に関するいくつかのエピソードをばらばらに読んでいくことになります。
解説によるとそれぞれの寄せ集めっぷりを見せるために、原本のほうはフォントやら文字色やらいろいろ工夫されていたらしいのですが、岩波さんのは文庫の制限があってそれを再現できなかったそうな。
そこだけは残念なところ。
とはいえ、レトロフューチャーといえど各エピソードはそれぞれぴりりと皮肉が聞いていて、読んでいて思わず笑ってしまうこともしばしば。
わたしの特にお気に入りな箇所は以下のエピソードですね。
1)最初のほうのエピソード、若者たちが単語を学習した山椒魚に出会うところ。
これはもう爆笑もの。
ゾンビ映画の序盤にジョックが惨殺されるのをげらげら笑っちゃう人はこのエピソード好きなんじゃないかな。
まあ山椒魚によるジョックの惨殺を期待すると肩すかしをくらうんですけど(ネタバレごめん)、ゾンビ映画のジョックパートで描かれるような若者の莫迦っぷりと欺瞞と微かに芽生えだすそれらへの自覚がふんだんに盛り込まれていて楽しめます。
このエピソードの最後のオチ、わたしは本当にげらげら笑い出してしまうくらい好きですね。
若いってのはそういうことだよなあ、と。
2)山椒魚に”精神”はあるかと各界の有識者が論じるエピソード
まあわたしも心理屋さんなので、そういうエピソードがあれば気になるしやっぱ面白いよね!
戯画化された研究者たちの議論は、若干露悪的なところもあるんですが、まあ方法論の限られてた時代だし仕方ないよねー感と、にしてもこんな言われようか…というしょっぱさともないませになって、なかなかシニカルな気持ちになって楽しめます。
それにこのエピソードの白眉は各界著名人が「山椒魚に精神があるかないか」コメントした体のアンケートですよ。
トスカニーニとかバーナード・ショーとかメイ・ウェストとか、その時代の実在の人物とおそらく架空の人物が入り乱れてコメントするんですけどこれがまあいかにもそれっぽいんですよ。
まあ基本的に山椒魚の精神の存在を否定するスタンスなんですが、それぞれの立場からどう答えるか、それは転じてそれぞれの立場における「精神とはいかなるものか」という考えを反映しておるんですね。
こりゃもう笑わずにはいられませんよ。
必見です。
3)ラスト
これはもうネタバレに次ぐネタバレなのであえて詳しい内容は言いませんが、古典と思って油断してたらそうくるのかよ!と。
まあ多くは語りますまい。
こればっかりは、初見の楽しみを奪うと何にもならないからねえ。
まあそんなかんじで古典ながらなかなか楽しめました。
チャペックといえば「ロボット」という単語の生みの親としても有名ですが、『山椒魚戦争』は「ロボット」初出となる『R.U.R.』と共通したモティーフであるそうな。
いわゆる「ディストピアもの」ですね。
チャペックの生涯とその時代からいってディストピアものになるのは当然の帰結なんだけど、それにしても時代を超えて、知的生命体や知的機械に対するいわれなき(根拠が挙げられてる場合もあるけど)恐怖ってのがいろんな作家に描かれるのはどういうわけか。
たしかブラッドベリにも、友好的で知能も高いけど見た目は巨大なクモっていうエイリアンを見た目が生理的に無理とかいう理由だけで虐殺する短編あったし。
やっぱキリスト教系の、「ヒトは神様の似姿として創造され、ヒト以外の被創造物はヒトのために存在する下等なもの」みたいな世界観が根強いのか。
日本みたいなアニミズムがつよくて「一切衆生悉有仏性」なんて考え方が出てくるようなところでは、『ドラえもん』とか『チンプイ』なんだよなあ。
(実は『チンプイ』はよく知らないのだけど)
いやまあキリスト教圏にも『E.T.』とか『グレムリン』とかあるけどね。でもどっちかってーといわれなき恐怖を示すのが多い気がする。
知らんもんが怖いのは当然っちゃー当然なんだけど。
そのへん、『Paul』でも最初の出会いはいわれなき恐怖が端的に描かれていたしなあ。
(過去めも参照)
ヒト以外の知的な何か=怖いもの、って知識が流布しているのではないかと。
それってあんまりうまくない態度だと思うんだけどなあ。
とりあえずこういうときは「イルカが攻めてきたぞ!」って言っておけばいいような気もする。
山椒魚に話を戻すと、実はわたしこれを読んでいる間なぜか山椒魚のイメージがずーしーほっきーで固定されてしまっていた。
(公式参照のこと。なお、画像集のほうがイメージしやすいかも)
山椒魚の体色は黒いって描写してあるだろ!いい加減にしろ!
とはいえ、色以外の描写からイメージされるあたまのかんじ、手足のかんじ、そして得体のしれないかんじが、ずーしーほっきーみたいな絵だとしっくりくるんだよなあ……
「山椒魚くらい別にこわくないだろ」と思ってしまうわたしみたいなやつは、ずーしーほっきーイメージして読むと、登場人物のぞわぞわ感が楽しめるかもしれない。
ずーしーほっきーがフリー素材としてつかえたら(公開されてる画像を編集するのはNGみたい)、黒塗りして山椒魚イメージ図作れるんだけどなー。
結論:ずーしーほっきーやっぱこわい。
あと、山椒魚の骨がヒトみたいに見えるっていわれた事件のことは前から知ってたんだけど、これ読んでも検証記事読んでも「それはねーよ……」ってなる。
山椒魚かわいいのにね。
さて、京都水族館にでも行って山椒魚を見てくるか。
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カテゴリ説明
もっさり:日々の雑感をもっさり。
がっつり:論文や研究関連をがっつり。
びっくり:科学ニュースでびっくり。
まったり:空想科学などでまったり。
ばっかり:デザイン系自己満足ばっかり。
ほっこり:お茶を嗜んでほっこり。
がっつり:論文や研究関連をがっつり。
びっくり:科学ニュースでびっくり。
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HN:
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性別:
非公開
自己紹介:
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分野は視覚認知。視知覚にがて。
あと記憶全般。
カテゴリ (semanticsか?) とかも。
最近デコーディングが気になる。
でも基本なんでもこい。
好奇心は悪食。
好きな作家(敬称略)
川上弘美
小林秀雄
津原泰水
森茉莉
レイ・ブラッドベリ
イタロ・カルヴィーノ
グレッグ・イーガン
シオドア・スタージョン
分野は視覚認知。視知覚にがて。
あと記憶全般。
カテゴリ (semanticsか?) とかも。
最近デコーディングが気になる。
でも基本なんでもこい。
好奇心は悪食。
好きな作家(敬称略)
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