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めもめも ...〆(。_。)

認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。

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セオリー通りというかなんというか,あのあと見事にひどい風邪をひき身をもってミイラの呪いを知る破目になったぜ!

ミイラの呪いに恐れをなしたというわけでもないのですが,いろいろとやることもあって,回転する小像の検証には時間が割けていない状況です.
(まあそもそも小像の謎に挑むためにこっち来たわけじゃないし)
というわけで,今回はひさびさに研究ネタをやろうと思います.
今こっちでちょっとカテゴリ認知のことを考えているので,そこらへんの論文をざっくりとまとめてみたいと思います.
あ,ここで言及するカテゴリは,日常的オブジェクトのカテゴリだと考えてください.
動物とか道具とかそういうやつ.

とりあえずは,まず「(オブジェクトの)カテゴリとは何か」的なところをもう一度確認.

んでこっちには(小像の謎のためではなく)神経科学の勉強にきているので,神経科学的にカテゴリってどうよ?という話になるんですが,イメージング的にはやっぱり後頭・側頭エリアが中心になってくるわけですね.
んでもってちょっと面白いと思ったのが,Adaptation/Repetition supressionをつかった研究.
Adaptation/Repetition supression(いい加減名称をどっちかに統一してほしい)という方法については,ご存知の方も多いと思いますが一応ざっくり説明しておくと,「同じ」刺激を繰り返し提示すると,行動的には反応時間が早くなったり(場合によっては課題正答率もあがったり),MRI的には信号が低下したりするというやつです.
発達心理学でつかわれる「脱馴化」も一種のAdaptation(のはず).

で,カテゴリとなると,知覚(=入力情報)はある程度ばらつくのに「同じ」とみなすことが必要になってくるわけです.
たとえば,赤い傘も青い傘も開いた傘も閉じた傘も,見た目は多様ですが「傘」カテゴリとして同じものとして処理せねばならんわけです.
そういう同じカテゴリに属するオブジェクトを繰り返して提示したときに,どんなエリアが信号低下を示すのか?というのを調べた研究がいくつかあるわけですよ.

ところがどっこい.
カテゴリにたいしてAdaptation/Repetition supressionを示す領域については,わりと意見が対立してるっぽいのです.
具体的にいうとfusiformあたり.
というわけで,その対立してるっぽい研究をいくつか拾って比較してみました.
ぜんぶぜんぶまるっと紹介するのはだるいので,ここでは<刺激><課題><主な結果>の3点にだけ注目することにしました.
もっと詳しく知りたいひとは,PubMedリンクつけるんで元論文あたってね.



・Koutstaal et al. 2001 Neuropsychologia
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11163375
カテゴリAdaptation/Repetition supressionの代表っぽい研究.

<刺激>
216種類(車とかラクダとかレベル)のオブジェクト画像各2枚ずつ,カラーイラスト
画像自体は商業データベースから取得
Pilot studyでオブジェクト命名が同じになるのを確認済み

<課題>
学習フェイズとテストフェイズに分かれる
学習フェイズもテストフェイズも実験参加者にしてもらうことは同じで,提示された画像のオブジェクトは実際には13インチ()立方の箱より大きいか小さいかを判断するという課題.
(実験始める前に13インチの箱を見せるらしい)
学習フェイズでは36種類のオブジェクトがそれぞれ計4回提示される
テストフェイズでは,学習フェイズに出てこなかった新奇オブジェクト,学習フェイズに出たのと同じ画像,学習フェイズに出たのと同じカテゴリだけと違う画像がでてくる.
学習フェイズに対してテストフェイズの各種刺激がどのくらい信号低下するかをみる

<主な結果>
前頭(両側frontal operculum,両側posterior inferior frontal,precentral,左anterior inferior frontal, superior frontalなど)や側頭そのほか(両側でmiddle occipital,fusiform,fusiform-parahippocampal,precuneus,posterior cingulateなど)で新奇オブジェクトに対して信号低下が見られた.
reductionswereobservedforsame than for different exemplarsinseveraloftheseregions
両側posterior inferior frontalや右precuneus,両側middle occipital,両側fusiform,両側parahippocampal,両側superior parietalといった領域では,同じカテゴリだけど違う画像よりもまったく同じ画像のときのほうが信号低下が大きかった.
それと右fusiformは左fusiformに比べて,同じカテゴリだけど違う画像に対する信号低下が少なかった.
これ以後の研究で,カテゴリ認知においてfusiformにlateralityがあるのか・そもそもfusiformはオブジェクトカテゴリに関与しているのかが議論の的になります.


・Vuilleumier et al. 2002 Nature Neuroscience
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11967545
Koutstaalたちの研究とは異なる結果になったもよう.
実験は2つ

<刺激>
実験1では80個の日常オブジェクトの白黒写真(オブジェクトだけトリミングしたやつ)と,40個の非オブジェクトの白黒画像(写真を合成して作られた)
日常オブジェクトは,40種類のオブジェクト画像2枚(見た目のちがうやつ)ずつで構成されている
実験2では実験1のオブジェクトと同じ画像または違う大きさ・違う視点の画像

<課題>
提示される画像が日常オブジェクトか非オブジェクトか判断する
実験1では各画像はランダムに2回提示される
その後数分間の休憩を挟んで実験2(そういうのって実験1・2の名前わけするのか・・・)
実験2では2回目の提示がまったく同じ画像の場合・同じ視点で違う大きさに撮った画像の場合・違う視点で同じ大きさに撮った画像の場合・違う視点で違う大きさに撮った視点の場合・これまで見ていない新しい画像の場合に分かれる.

<主な結果>
実験1で,両側fusiformと左inferior frontalでのみ,非オブジェクトより日常オブジェクトでのAdaptation/Repetition supressionが大きかった.
非オブジェクトには意味カテゴリ情報が含まれておらず日常オブジェクトには含まれているから,これらの領域が意味カテゴリに関与する可能性がある.
だけど,同じカテゴリの違う画像を提示してAdaptation/Repetition supressionがみられたのはfrontal operculumだけだった.
実験2では,大きさの変化や視点の変化が加わったけど,大きさ変化だけの効果でAdaptation/Repetition supressionが変わる領域はなかった.
右fusiformは視点が同じ画像にだけAdaptation/Repetition supressionを示した
右posterior parietalは違う視点の同じオブジェクトだと新奇オブジェクトよりも活動が高くなった
大きさや視点がかわってもAdaptation/Repetition supressionがみられたのは左fusifromだけ.

この研究でもfusiformにlateralityがあることが示唆されていますね.
ただ,fusiformは同じカテゴリの違うオブジェクトに対してAdaptation/Repetition supressionしなかったことから,意味カテゴリよりもオブジェクト表象そのものに特化しているように思われます.


・Simons et al. 2003 Neuroimage
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12880792
Koutstaaalグループ側からの反論.
オブジェクトの名前を聴覚刺激としてオブジェクト絵に若干(50ミリ秒)先行して提示したりして,意味情報がfusiformに関与してることを証明してやんよ!という話です.

<刺激>
Koutstaalらの研究でつかっていたようなカラーイラスト,今回は288種類を2枚ずつ.
今回は単語・非単語な聴覚刺激もつかうので,それも288種類.
単語はオブジェクトの名前.
非単語はオブジェクトの名前と同シラブル数になるようphonemeを並べたもの.

<課題>
Koutstaaalらの研究と同じようなかんじで,学習フェイズとテストフェイズが設定されています.
そしてどちらでも実験参加者がすることは同じで,提示されるオブジェクトが13インチの箱より大きいか小さいか判断する
半分の試行で,画像提示の50ミリ秒前に単語がヘッドホンから提示される
残り半分は非単語提示
(単語には注意を払うよう指示してあるけど,課題には直接関係ない)
学習フェイズは32種類の画像からなる刺激セットが3回繰り返される
テストフェイズは32種類の新奇画像,16種類の学習フェイズと同じ画像(そのうち8種類は単語提示,残り8種類は非単語提示),16種類の同じカテゴリだけど違う見た目の画像(同じく8種類単語提示&8種類非単語提示)が提示される

<主な結果>
単語・非単語の条件合わせた分析で,新奇オブジェクトに比べて学習フェイズと同じオブジェクトで信号低下を示した領域は両側fusiformや両側lateral occipital,両側inferior prefrontal,anterior cingulateなどの領域
右fusiformや両側lateral occipitalは同じ画像には信号低下したけど同じカテゴリ違う画像にはあんまし低下しなかった
左fusiformは同じオブジェクト<同じカテゴリだけど違うオブジェクト<新奇オブジェクトってな%signal changeになった
単語・非単語の条件を分析に入れたら,右fusiformや両側lateral occipitalの活動はこの条件に影響されなかった
一方,左fusiformは単語・非単語の影響にえっらい個人差があるようなのでちょっとグループ分けしてみた
グループ間の信号自体には有意差はないけど,同じカテゴリ違うオブジェクトで単語提示されたほうが非単語提示より活動が低下するグループとその逆になるグループにわかれた.
他に,左inferior prefrontalの前のほうで同じオブジェクト≒同じカテゴリ違うオブジェクト<新奇オブジェクトとなった
加えてこの領域は,同じオブジェクトのときのみ単語提示で非単語提示より信号低下したけど,同じカテゴリ違うオブジェクトではその効果はなかった

とりあえずfusiformのlateralityはあるっぽい.
まあオブジェクトカテゴリに限らずfusiformのlateralityについてはいろいろおもしろい議論があるみたいなので,機会があったらそこらへんについてもちょっと論文をみてみたい.
しかし問題は左fusiformが何をやってるかだよなあ.
この研究からは,視覚情報から意味情報を取得するストリームに関与してると思えるが.


・Chouinard et al. 2008 Neuroimage
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18375148
いやいやfusiformは意味とかじゃなくって知覚寄りじゃね,という反論.

<刺激>
120種類のオブジェクトのカラー写真(オブジェクトのみトリミングしたやつ),見た目の異なるのを各2枚ずつ
繰り返し提示のときに,まったく同じ画像,同じカテゴリだけど違う画像,新奇オブジェクトの3種類が出るように設定
Grill-Spectorらの1999年の研究みたいに,ピクセル毎にRGB取得して画像同士の類似度を定義して,同じカテゴリ違うオブジェクトと新奇オブジェクトの「見た目の異なる」度合いが近くなるように調整した.

<課題>
オブジェクト命名またはオブジェクトの数を数える
1ランに12ペア提示,繰り返し(または同じカテゴリ違うオブジェクト,あるいは新奇オブジェクト)は1回
それとは別にオブジェクト特異的な領域を特定するfunctional localizer(オブジェクト-スクランブル画像)を実施

<主な結果>
ローカライザで活動を示した領域は左inferior frontalの後方,左anterior cingulate,左medial frontal,左middle fusiform,両側posterior fusiform,両側lateral occipitalなど
グループ解析で,新奇オブジェクトに対し同じ画像でAdaptation/Repetition supressionを示したLateral-Occipital領域は,左middle fusiform,両側posterior fusiform,左lateral occipital
そのうちカウント課題より命名課題で活動が大きかったのは左middle fusiformと左posterior fusiform
同じカテゴリ違うオブジェクト>同じ画像な活動になったのもだいたい似たような領域,命名課題で左fusiformの活動大きいのも似たようなかんじ
他の領域では,左inferior frontalの後方,左anterior cingulate,左medial frontalは命名課題でのみ同じ画像や同じカテゴリ違うオブジェクトでAdaptation/Repetition supressionを示した
また同じカテゴリ違うオブジェクト>同じ画像な活動になった
ROI分析の結果もほぼ似たようなかんじで,fusiformなど側頭後頭領域は同じ画像のときだけAdaptation/Repetition supressionを示し,同じカテゴリ違うオブジェクトでは新奇オブジェクトに比べて活動が低下しなかった
でも前頭領域だと新奇オブジェクト>同じカテゴリ違うオブジェクト>同じ画像ってなかんじになった
つまり,fusiformが同じカテゴリ違うオブジェクトでもAdaptation/Repetition supressionを示していたという先行研究は,視覚的類似性を統制しないから(視覚的に似たようなオブジェクトを提示したから)で,fusiformが意味カテゴリに関与してるというのは違うくね?という主張.
とはいえ,fusiformでもAdaptation/Repetition supressionの量は命名課題>カウント課題になってる(ただし新奇オブジェクトと同じカテゴリ違うオブジェクトとに差はない)ので,まったく無関係というわけではなさそうだけれども,Chouinardらはトップダウン調節の結果じゃないかと考えているもよう.


・Fairhall et al. 2011 J. Neurophysiol.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21543757
この際だから徹底的に視覚的類似性の変数統制しちゃえよ!ってな研究.

<刺激>
30種類の動物&30種類の道具の白黒写真をトリミングしたもの
1カテゴリにつき画像は3枚
Chouinardらの研究でもつかわれていたピクセルワイズの類似性と2次元スペクトラル類似性と輪郭の形の類似性とを統制

<課題>
提示されるオブジェクトが12インチの箱より大きいかどうか判断
1セッションで120枚の画像を提示
1セッションに繰り返しは1回(同じ画像か,同じカテゴリ違うオブジェクト)
最初に提示したときの信号と2回目提示の信号からAdaptation/Repetition supressionの量を定義

<主な結果>
動物画像提示試行-道具画像提示試行で動物特異的領域特定したら両側posterior lateral fusiformとか右posterior inferotemporalとか右anterior lateral fusiform,右superior temporalとかでた
逆のコントラストで道具特異的領域だしたら左superior occipitalや左middle temporal,左intraparietal,両側anterior medial fusiformだった
まあこれ自体は珍しくもなんともない結果ですが,これらの領域におけるAdaptation/Repetition supressionの量を見ると,どの領域でもだいたいAdaptation/Repetition supressionが示された
でもだいたい動物特異的領域でも道具特異的領域でもオブジェクトが道具か動物かに関わらずAdaptation/Repetition supressionがみられた
ただ右superior temporalだけは動物のカテゴリレベルにのみAdaptation/Repetition supressionを示した
それと,画像レベルのAdaptation/Repetition supressionを示す領域とカテゴリレベルのAdaptation/Repetition supressionを示す領域をそれぞれボクセルワイズに出してみたら後頭側頭領域では75%がかぶった
統計の水準さげたら左prefontalも出たけど微妙い(そういえばこの研究ではぜんぜん前頭領域でなかったな)
両側middle temporalと左medial anterior fusiformは画像レベルのAdaptation/Repetition supressionが大きくてカテゴリレベルのは弱かった(弱いなりにある)
ドメイン(動物・道具)レベルでのAdaptation/Repetition supressionは両側anterior fusiform内でみられた
やっぱり後ろから前にかけて,画像レベル‐カテゴリレベル‐ドメインレベルといった階層構造の処理しているのでは?

そういえばこの研究はあんましfusiformのlateralityに言及してないな.
画像の類似性統制して,まあ類似性の影響はあるっちゃああるんだけど,でもそれだけじゃなくてカテゴリやドメインの影響もありますよ,ということらしい.
つまりfusiformはまあ視覚寄りでもあるけど,(特に前のほうは)カテゴリに関与してないわけじゃないってことか.


まあだいたいこんなかんじです.
結論としては,
・やっぱfusiformも左が抽象・意味寄りで,右が視覚寄りかもしれない
・視覚特徴処理に関与してるけど,そこからカテゴリ情報に至る処理にも関わってるかも?
というところか.

しかし,どうやって?
という疑問は残りますな.
ここらへんはもう少しじっくり考えたいところ.
まあ時間とれたらちょっと考えてみるかな.
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