めもめも ...〆(。_。)
認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。
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文体だ、流麗な文体を食べたい…
ということで百閒先生の『サラサーテの盤』を読んだ。
表題作はじめ百閒先生の短編小説集。
うっひゃあ…これはホラーだわ。
表題作もなかなかのホラーなのだけれども、わたしが心底ぞっとし たのは『南山寿』という短編。
退官した大学教授の家に、後任の教官が訪ねてくるのだが、どうもこいつがうさんくさくて…というお話なんだけど、始終この後任の 教官のふるまいにぞわぞわさせられる上、最後のほうの展開といったら……ホラーを説明しすぎるとろくなことはないので省きますが、ラストに至って背筋の凍るような思いになりました。
やっぱ気温が上がってきたらホラーを読まなきゃな!!
百閒先生の短編は、まさに一合こっきりしかない純米酒のようである。
きりりと冷え、口中で華やかな広がりを見せると思ったらすとんと胃の腑に落ちて、そしてなんだかまわりの世界がふわっと浮いてく るような心持ちがしてくる。
これは…これは酔ったのか?まだその入り口なのか?と訝しんでいるといつのまにか徳利の底が見えている。
もう少し、もうほんの少しだけ味わいたい…と思ってもそれっきり。
あとに茫漠と広がる余韻を、こっちも茫然として眺めて居るしかない。
これで調子づいて杯を重ねると悪酔いする。
なのでわたしも百閒先生の短編集を一気読みするような無謀なまねはしない。
少しずつ、少しだけ、ちろちろと舐めているのがよいのだ。
あんまり読みすぎると、現実がふわっふわ浮ついて、明日からの仕事が手につかなくなってしまう。
冒頭の『東京日記』という掌編集は、東京の地理に詳しくないからかろうじてこちら側に足を残していられるものの、ひとひらひとひらの短さ軽さについつい読み進めて、気が付いたら異界にひとり取り残されるような趣があるので要注意。
現実と地続きの異界を幻視することに関しては本当にもう百閒先生の掌で転がされるしかない。
まあそれが楽しくてならない数寄者が百閒先生を読むのであろ。
そういったホラーの中に、ちょっと異彩を放つ短編が混じっている。
検校もの、とでも呼ぼうか、百閒先生が交流のあった宮城検校の死を扱った小説や、彼をモティーフとした検校を主人公に据えた小説がある。
飄々としてあたかも口元に微笑でも浮かんでいるような、でもまなざしには寂寞たる悲しみが一面に湛えられているような、そんな友人としての顔が浮かんでくる味わいで宮城検校の死を扱った『東海道刈谷駅』もよいのだけれど、検校を主人公に据えて表現を最小限度に絞った『柳検校の小閑』が最高によい。
あれ、これはひょっとして…という小さな疑いは、何一つとして確証を与えられないまま、ラストに至る。
でもこのラストはどう考えても…と思って最後の解説を読めば、はっきりと「恋の物語」と断じられている。
これは、ぎりぎりにまで表現を絞り、何食わぬ顔を貫き通しての「忍ぶ恋」の物語なのだ。
そう思って読み返せば、最初には気付かなかった淡い心の揺れがそこかしこにちらちらと見えてくる。
見えてきたところで、それは何にも結び付かず、ただ淡い淡い波紋を投げかけていくだけ。
こんな、こんな恋物語もあるのか、百閒先生。
奥が深すぎてめまいがする。
ここで油断していると、めまいから異界に連れていかれかねない。
用心だ、用心して今は本を閉じよう。
明日はどうなるかわからない。
ということで百閒先生の『サラサーテの盤』を読んだ。
表題作はじめ百閒先生の短編小説集。
うっひゃあ…これはホラーだわ。
表題作もなかなかのホラーなのだけれども、わたしが心底ぞっとし たのは『南山寿』という短編。
退官した大学教授の家に、後任の教官が訪ねてくるのだが、どうもこいつがうさんくさくて…というお話なんだけど、始終この後任の
やっぱ気温が上がってきたらホラーを読まなきゃな!!
百閒先生の短編は、まさに一合こっきりしかない純米酒のようである。
きりりと冷え、口中で華やかな広がりを見せると思ったらすとんと胃の腑に落ちて、そしてなんだかまわりの世界がふわっと浮いてく
これは…これは酔ったのか?まだその入り口なのか?と訝しんでいるといつのまにか徳利の底が見えている。
もう少し、もうほんの少しだけ味わいたい…と思ってもそれっきり。
あとに茫漠と広がる余韻を、こっちも茫然として眺めて居るしかない。
これで調子づいて杯を重ねると悪酔いする。
なのでわたしも百閒先生の短編集を一気読みするような無謀なまねはしない。
少しずつ、少しだけ、ちろちろと舐めているのがよいのだ。
あんまり読みすぎると、現実がふわっふわ浮ついて、明日からの仕事が手につかなくなってしまう。
冒頭の『東京日記』という掌編集は、東京の地理に詳しくないからかろうじてこちら側に足を残していられるものの、ひとひらひとひらの短さ軽さについつい読み進めて、気が付いたら異界にひとり取り残されるような趣があるので要注意。
現実と地続きの異界を幻視することに関しては本当にもう百閒先生の掌で転がされるしかない。
まあそれが楽しくてならない数寄者が百閒先生を読むのであろ。
そういったホラーの中に、ちょっと異彩を放つ短編が混じっている。
検校もの、とでも呼ぼうか、百閒先生が交流のあった宮城検校の死を扱った小説や、彼をモティーフとした検校を主人公に据えた小説がある。
飄々としてあたかも口元に微笑でも浮かんでいるような、でもまなざしには寂寞たる悲しみが一面に湛えられているような、そんな友人としての顔が浮かんでくる味わいで宮城検校の死を扱った『東海道刈谷駅』もよいのだけれど、検校を主人公に据えて表現を最小限度に絞った『柳検校の小閑』が最高によい。
あれ、これはひょっとして…という小さな疑いは、何一つとして確証を与えられないまま、ラストに至る。
でもこのラストはどう考えても…と思って最後の解説を読めば、はっきりと「恋の物語」と断じられている。
これは、ぎりぎりにまで表現を絞り、何食わぬ顔を貫き通しての「忍ぶ恋」の物語なのだ。
そう思って読み返せば、最初には気付かなかった淡い心の揺れがそこかしこにちらちらと見えてくる。
見えてきたところで、それは何にも結び付かず、ただ淡い淡い波紋を投げかけていくだけ。
こんな、こんな恋物語もあるのか、百閒先生。
奥が深すぎてめまいがする。
ここで油断していると、めまいから異界に連れていかれかねない。
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カテゴリ説明
もっさり:日々の雑感をもっさり。
がっつり:論文や研究関連をがっつり。
びっくり:科学ニュースでびっくり。
まったり:空想科学などでまったり。
ばっかり:デザイン系自己満足ばっかり。
ほっこり:お茶を嗜んでほっこり。
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非公開
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分野は視覚認知。視知覚にがて。
あと記憶全般。
カテゴリ (semanticsか?) とかも。
最近デコーディングが気になる。
でも基本なんでもこい。
好奇心は悪食。
好きな作家(敬称略)
川上弘美
小林秀雄
津原泰水
森茉莉
レイ・ブラッドベリ
イタロ・カルヴィーノ
グレッグ・イーガン
シオドア・スタージョン
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