めもめも ...〆(。_。)
認知心理学・認知神経科学とかいろいろなはなし。 あるいは科学と空想科学の狭間で微睡む。
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そいえばネタにしようと思ってひろっといたのにネタにし忘れてるのがあった。
http://japan.digitaldj-network.com/archives/51905694.html
これってどうなん?
とりあえず日本語記事のとこを引用すると
南カリフォルニア大学のプレスリリースによると、同大学・医用生体工学学科のセオドア・バーガー(Theodore Berger)教授が、海馬という脳の長期記憶を司る部位の機能を模倣したチップを使い、ラットが学習した記憶を複製することに成功。
また脳につながれたスイッチを「On」することで長期記憶を復元し、「Off」にすることで忘却させることができたそうだ。ここからさらに忘却したラットにエンコードした記憶を再インストールするとこもできたという。また、このデバイスをラットに繋いだ状態で学習を行ったところ、ラットの記憶能力を向上させることにも成功したという。
という話。
あと付け足されているのは書き手の感想と妄想なのでおいておくとして(なんでかブレイン・マシン・インタフェースが出てきてるけど)。
とりあえずさいごに論文が引用されているのはよいな。ソースを探す手間が省ける。
んで出されている論文がこれ
http://iopscience.iop.org/1741-2552/8/4/046017/
Free Articleだから門外漢でも読めるよー。
れっつやじうま!
まあ日本語記事を読んで気になるのは
まあ工学的な点は工学やさんがつっこんでるだろうし、神経科学っつっても細胞系はとんと素養が無いんでつっこめないし、とりあえず心理やさんが気にする心理・機能・行動んとこだけ確認しておくことにする。
本文を見ると、「記憶」を調べる課題としては遅延見本あわせ(delayed-nonmatch-to-sampleって書いてあるけど、あれmatchじゃなくてnonmatchなの?)をつかったそうな。
まずラットは目標課題正解率に達成するまで訓練されてる。
この目標正解率不明(えっ)。
まあ工学系論文誌なら行動指標をおろそかにすることもあるだろう・・・
最初この正解率を「85%」と読み間違えたけど85%なのは体重だった。
(おなかすいてるほうがえさが報酬の実験をまじめにやるため、動物の実験では体重をコントロールするらしい)
課題内容はこの研究グループの先行研究と同じって書いてあるから、そっちに詳しく書いてあるのかもしれない。
とりあえずこの論文に書いてある範囲でわかる課題内容みる。
実験するはこみたいなやつにねずみをいれるんだけど、はこの片側の壁に水いれがあって、その水入れの右と左にそれぞれレバーがある。反対側の壁には、ねずみがはなっつらつっこむとこがある。
まず、どっちか片方のレバーが出てくるので、ねずみは出てきたレバーをおす。
しばらくしたら、鼻つっこみどころに鼻をつっこむ。
鼻つっこみのあとしばらくしたら(この「しばらく」は1秒~30秒ほどばらつかせている)、レバーの両方が出てくるので、「さっきおさなかったほう」のレバーをおす。
ちゃんと正解したら水入れに報酬として水が出てくる。最初におしたレバーとおなじレバーおしたら水は出ない。
という内容。
(だからnonmatchなわけね。イメージ的にはgo/no-goと似たようなもんか。やってることちょっと違うけど)
で、課題の正答率(ちゃんと「さっきおさなかったほう」をおせた割合)をみますよ、と。
んで、海馬(CA3とCA1)に電極さして、課題を学習(=encoding)するときの細胞の活動を記録しておく。
ここの研究グループはCA3とCA1の発火のモデリングやってて、CA1の発火からCA3の発火を予測することができるようになってるらしい。
そのモデルを利用して、さっきの「鼻つっこみのあとしばらく待つ」状態で電気刺激を与え、「さっきどのレバーをおしたか」の記憶を変容できるか、というのがこの実験のおおまかな流れのよう。
・・・ん?
「記憶を複製するふしぎなチップ」の話がいっこうに出ないぞ・・・?
海馬にさされてるのってそんなに特殊な電極でもないっぽいしなあ(技術の粋ではあるけども。あとシングルよりもマルチのがたいへんって話もあるけど)。
これチップがどうこうのはなしじゃなくって、モデリングがすごいって話じゃね?
結果の図とか見てても、最初は「このモデルで課題成績予測できたよー」で、次が「学習時の活動パタンを増強するような電気刺激を送ったら正答率うp」で、その次が「学習時の活動パタンをまぜっかえすような電気刺激を送ったら正答率ダウン」って話みたいだし。
たしかに正答率ダウンのとこではチャンスレベルきってるし(とはいえ「しばらく」の遅延期間が長すぎると特になにも刺激あたえてなくってもチャンスレベルなみの正答率だけどな!)。
記事のスイッチってまさか電気刺激いれる機械のスイッチか?
スイッチいれるいれないの話なんかないぞ・・・
日本語記事の「スイッチひとつで忘却」ってのとずいぶん開きがある気がする・・・
まあいつものパターンっちゃパターンか。
まあでもすごいよね!
単純な内容(かつ「長期記憶」としては短いスパンの情報保持)だけど、実験者のコントロールする電気刺激でその内容を変容させてるっぽいところが。
大きくみると、電気刺激のとこは無理にしても、ヒトのデコーディング研究も似たようなアプローチだと考えられるよね。
これをヒトに応用するには気が遠くなるくらいものすげーおかねと時間をかけたステップが必要だけど、まあ千里の道も一歩からっていうし。
おもしろい研究であることには間違いない。
でも
「少なくともラットの段階で「攻殻機動隊」や「マトリックス」のように記憶を消し去ったりバックアップしたりすることができるようになったということらしい。さらに、このデータをオンラインに繋ぐことはきっと簡単なこと・・・」
(日本語記事からの引用)
みたいな煽りをされてしまうと、過剰に期待してしまう罠。
それぐらい煽るんだったら、
ラットAに実験課題を学習させる→学習時の発火パタンをふしぎなチップに記録→ラットBにチップを埋め込むと、学習していないはずの実験課題がらくらくクリア!→チップのスイッチを切る(orチップを外す)と、学習してない状態に戻って課題できない→チップのスイッチを入れる(チップを入れる)とやっぱりまた課題ができちゃう!
ぐらいのすごい研究なんじゃないか!って思うよなー。
おまえは都市伝説のプラナリアかっつーの。
でもいつかそれぐらい記憶研究が発達すればいいなーとは思ってる。
ま、世の中そう一筋縄ではいかないんですけどねー。
あとまあいろんなとこで繰り返された話だけど、ヒトの記憶ってえやつがいかにあいまいで複雑でめんどくさいものかってことを考えると、「失われたときを求めて」チップなり電極なりいれても再現は難しい、というか。
そもそも「失われる前のバックアップ」ならまだしも「失われてからの再現」とか無理すぎるよなー、デコーディングなんかの手法だと。
なんかいい方法があればいいけど。
・・・まあそんないい方法思いついたら、シミュレーション書いて論文にするよな!
ほんとのうみそなんか一筋縄でいかないわ。
http://japan.digitaldj-network.com/archives/51905694.html
これってどうなん?
とりあえず日本語記事のとこを引用すると
南カリフォルニア大学のプレスリリースによると、同大学・医用生体工学学科のセオドア・バーガー(Theodore Berger)教授が、海馬という脳の長期記憶を司る部位の機能を模倣したチップを使い、ラットが学習した記憶を複製することに成功。
また脳につながれたスイッチを「On」することで長期記憶を復元し、「Off」にすることで忘却させることができたそうだ。ここからさらに忘却したラットにエンコードした記憶を再インストールするとこもできたという。また、このデバイスをラットに繋いだ状態で学習を行ったところ、ラットの記憶能力を向上させることにも成功したという。
という話。
あと付け足されているのは書き手の感想と妄想なのでおいておくとして(なんでかブレイン・マシン・インタフェースが出てきてるけど)。
とりあえずさいごに論文が引用されているのはよいな。ソースを探す手間が省ける。
んで出されている論文がこれ
http://iopscience.iop.org/1741-2552/8/4/046017/
Free Articleだから門外漢でも読めるよー。
れっつやじうま!
まあ日本語記事を読んで気になるのは
- 「海馬(左画像) という脳の長期記憶を司る部位の機能を模倣したチップ」とあるが、海馬の/長期記憶の何の機能を模倣したのか
- ↑についてはどう模倣したのか、という疑問もあるけど、文系心理やさんじゃあ聞いてもわからん予感
- 「ラットが学習した記憶を複製することに成功」とはどのような行動をさすのか
- 「脳につながれたスイッチを「On」することで長期記憶を復元し」の「復元」はどのような行動をさすのか(上の「学習成功」とおなじ達成率とかか?)
- そもそもスイッチとは何なのか
- 「「Off」にすることで忘却させることができたそうだ」の「忘却」とはどのような行動をさすのか
- 「忘却したラットにエンコードした記憶を再インストールするとこもできた」の「エンコード」とは何をさすのか、ラットが記銘した?チップに何らかの入力を行った?
- 「ラットの記憶能力を向上させることにも成功した」の「記憶能力」とはどんな指標によるものか?
まあ工学的な点は工学やさんがつっこんでるだろうし、神経科学っつっても細胞系はとんと素養が無いんでつっこめないし、とりあえず心理やさんが気にする心理・機能・行動んとこだけ確認しておくことにする。
本文を見ると、「記憶」を調べる課題としては遅延見本あわせ(delayed-nonmatch-to-sampleって書いてあるけど、あれmatchじゃなくてnonmatchなの?)をつかったそうな。
まずラットは目標課題正解率に達成するまで訓練されてる。
この目標正解率不明(えっ)。
まあ工学系論文誌なら行動指標をおろそかにすることもあるだろう・・・
最初この正解率を「85%」と読み間違えたけど85%なのは体重だった。
(おなかすいてるほうがえさが報酬の実験をまじめにやるため、動物の実験では体重をコントロールするらしい)
課題内容はこの研究グループの先行研究と同じって書いてあるから、そっちに詳しく書いてあるのかもしれない。
とりあえずこの論文に書いてある範囲でわかる課題内容みる。
実験するはこみたいなやつにねずみをいれるんだけど、はこの片側の壁に水いれがあって、その水入れの右と左にそれぞれレバーがある。反対側の壁には、ねずみがはなっつらつっこむとこがある。
まず、どっちか片方のレバーが出てくるので、ねずみは出てきたレバーをおす。
しばらくしたら、鼻つっこみどころに鼻をつっこむ。
鼻つっこみのあとしばらくしたら(この「しばらく」は1秒~30秒ほどばらつかせている)、レバーの両方が出てくるので、「さっきおさなかったほう」のレバーをおす。
ちゃんと正解したら水入れに報酬として水が出てくる。最初におしたレバーとおなじレバーおしたら水は出ない。
という内容。
(だからnonmatchなわけね。イメージ的にはgo/no-goと似たようなもんか。やってることちょっと違うけど)
で、課題の正答率(ちゃんと「さっきおさなかったほう」をおせた割合)をみますよ、と。
んで、海馬(CA3とCA1)に電極さして、課題を学習(=encoding)するときの細胞の活動を記録しておく。
ここの研究グループはCA3とCA1の発火のモデリングやってて、CA1の発火からCA3の発火を予測することができるようになってるらしい。
そのモデルを利用して、さっきの「鼻つっこみのあとしばらく待つ」状態で電気刺激を与え、「さっきどのレバーをおしたか」の記憶を変容できるか、というのがこの実験のおおまかな流れのよう。
・・・ん?
「記憶を複製するふしぎなチップ」の話がいっこうに出ないぞ・・・?
海馬にさされてるのってそんなに特殊な電極でもないっぽいしなあ(技術の粋ではあるけども。あとシングルよりもマルチのがたいへんって話もあるけど)。
これチップがどうこうのはなしじゃなくって、モデリングがすごいって話じゃね?
結果の図とか見てても、最初は「このモデルで課題成績予測できたよー」で、次が「学習時の活動パタンを増強するような電気刺激を送ったら正答率うp」で、その次が「学習時の活動パタンをまぜっかえすような電気刺激を送ったら正答率ダウン」って話みたいだし。
たしかに正答率ダウンのとこではチャンスレベルきってるし(とはいえ「しばらく」の遅延期間が長すぎると特になにも刺激あたえてなくってもチャンスレベルなみの正答率だけどな!)。
記事のスイッチってまさか電気刺激いれる機械のスイッチか?
スイッチいれるいれないの話なんかないぞ・・・
日本語記事の「スイッチひとつで忘却」ってのとずいぶん開きがある気がする・・・
まあいつものパターンっちゃパターンか。
まあでもすごいよね!
単純な内容(かつ「長期記憶」としては短いスパンの情報保持)だけど、実験者のコントロールする電気刺激でその内容を変容させてるっぽいところが。
大きくみると、電気刺激のとこは無理にしても、ヒトのデコーディング研究も似たようなアプローチだと考えられるよね。
これをヒトに応用するには気が遠くなるくらいものすげーおかねと時間をかけたステップが必要だけど、まあ千里の道も一歩からっていうし。
おもしろい研究であることには間違いない。
でも
「少なくともラットの段階で「攻殻機動隊」や「マトリックス」のように記憶を消し去ったりバックアップしたりすることができるようになったということらしい。さらに、このデータをオンラインに繋ぐことはきっと簡単なこと・・・」
(日本語記事からの引用)
みたいな煽りをされてしまうと、過剰に期待してしまう罠。
それぐらい煽るんだったら、
ラットAに実験課題を学習させる→学習時の発火パタンをふしぎなチップに記録→ラットBにチップを埋め込むと、学習していないはずの実験課題がらくらくクリア!→チップのスイッチを切る(orチップを外す)と、学習してない状態に戻って課題できない→チップのスイッチを入れる(チップを入れる)とやっぱりまた課題ができちゃう!
ぐらいのすごい研究なんじゃないか!って思うよなー。
おまえは都市伝説のプラナリアかっつーの。
でもいつかそれぐらい記憶研究が発達すればいいなーとは思ってる。
ま、世の中そう一筋縄ではいかないんですけどねー。
あとまあいろんなとこで繰り返された話だけど、ヒトの記憶ってえやつがいかにあいまいで複雑でめんどくさいものかってことを考えると、「失われたときを求めて」チップなり電極なりいれても再現は難しい、というか。
そもそも「失われる前のバックアップ」ならまだしも「失われてからの再現」とか無理すぎるよなー、デコーディングなんかの手法だと。
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カテゴリ説明
もっさり:日々の雑感をもっさり。
がっつり:論文や研究関連をがっつり。
びっくり:科学ニュースでびっくり。
まったり:空想科学などでまったり。
ばっかり:デザイン系自己満足ばっかり。
ほっこり:お茶を嗜んでほっこり。
がっつり:論文や研究関連をがっつり。
びっくり:科学ニュースでびっくり。
まったり:空想科学などでまったり。
ばっかり:デザイン系自己満足ばっかり。
ほっこり:お茶を嗜んでほっこり。
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分野は視覚認知。視知覚にがて。
あと記憶全般。
カテゴリ (semanticsか?) とかも。
最近デコーディングが気になる。
でも基本なんでもこい。
好奇心は悪食。
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川上弘美
小林秀雄
津原泰水
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レイ・ブラッドベリ
イタロ・カルヴィーノ
グレッグ・イーガン
シオドア・スタージョン
分野は視覚認知。視知覚にがて。
あと記憶全般。
カテゴリ (semanticsか?) とかも。
最近デコーディングが気になる。
でも基本なんでもこい。
好奇心は悪食。
好きな作家(敬称略)
川上弘美
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